2020年12月に打ちだした「2050年カーボンニュートラル」政策をもとに政府が2030年半ばに向けて新車の電動化を表明したことで、永きにわたって自動車を支え続けたガソリンスタンド(GS)は消えていく運命なのか?
いっぽうで、EV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)を支える充電スタンドなどのインフラ整備は今後、急速に増えていくのか?
急激にガソリンスタンドが減ってしまい、遠くまで行かないと給油できなくなる時代がもうすぐそこまで来ている。実際のところ、どうなってしまうのか、モータージャーナリストの岩尾信哉氏が追う。
文/岩尾信哉
写真/ベストカー編集部、ベストカーweb編集部、経済産業省/資源エネルギー庁(給油所数の推移表)、次世代自動車振興センター(EV販売台数)、経済産業省(充電設備の種類)、トヨタ
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■ガソリンスタンドは急速に激減してしまうのか?
石油業界ではサービスステーション(SS)とも呼ばれるGSはこの十数年で減少を続け、一時期には休業を余儀なくされた店舗が都会・地方を問わず目につくことが多かった。
GS全体の数は、フルサービス拠点数は2万9396施設、うちセルフサービスの拠点数は8393店舗(2020年12月末時点、ENEOS推定値)となっている。
遡ってGS拠点数のピークは1994年の約6万拠点から25年連続で減少を続け、現在ではほぼ半減してしまい、大手元売3社に関しては以下のようになる(2020年12月末時点)
・ENEOS:1万2657店舗(セルフSS数:4469店舗)
・出光興産:出光:3430店舗(同:1342店舗)、昭和シェル:2894店舗(1066店舗)
・コスモ石油:2734店舗(同:1096店舗)
まずは大手元売り3社に今後の経営方針などを訊ねてみたのだが、筆者自身がSS運営についての知識不足に改めて気づかされてしまった。そこには石油小売り業界独特のビジネス形態が見えてきた。
大手元売り3社としては「直営店舗を除いて、個々のSSを運営する企業の経営に直接的に関与することはありません。地域ごとの運営会社や各販売店の事情でビジネスの手法は変わります。いわゆる上下関係ではなく、休業などを含めた経営判断については個々の企業や販売店に委ねられているのです」と説明された。
そこで石油ビジネス関連の業界紙である燃料油脂新聞に、店舗数の減少傾向など、より具体的なSS経営事情について訊いてみた。
先に述べたとおり、運営企業の後継者不足などによるSSの減少傾向は明らかだが、コロナ禍とそれによる2020年4月の緊急事態宣言による影響で店舗数は約1割減少したとのことだった。
「今年3~5月の需要は落ちましたが、同時期の原油の価格相場の下落で持ち直しました。販売店では周囲にある店舗との兼ね合いで、原油価格が上昇しても店頭での販売価格は簡単には上げられません。
いっぽうで、仕入れ価格の変化とのタイムラグが作用して利益を上げられることがあります。最近は原油価格は上昇を続けていますが、そう簡単に販売価格を上げるわけにはいかないのです」。
それでは都会と地方など、地域による経営状況の差も店舗の減少に繋がっているのではないかと訊くと「過疎地域は別だが、郊外の店舗では影響は少ない」としたうえで「都市部では業態が変更しやすい」という。
薄利多売が基本のスタンド経営では、個々の運営会社の事情によって、ここ数年ではコンビニエンスストアなどへの経営転換を図る場合も見られるようになったという。
将来的な問題はもちろん「カーボンニュートラル政策への対応」とのことだが、甚だ安直かもしれないが、将来のビジネスとして、立地条件などインフラの有利さを活かして後述する充電設備を併設してビジネスを進めるといった可能性はあるのだろうか。
「現状では補助金を利用しても、設置コストを“充電代金”によって元を取ることはできないでしょう。ガソリン販売ほど来店者の回転をよくすることは難しく、ビジネスとして見合わないのです」というのは、充電にかかる時間などを考えれば納得がいく。
となれば、やはり収益を上げるには、当面は中古車販売やカーリース/シェアリング、コンビニの併設などといったビジネスの多角化によって集客を図るということになるのだろう。
ともかく、GSの経営とは、商品価格が相場に左右されるゆえに、危うくもありしぶとくもある独特のビジネスであることは間違いない。
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