■W126に乗る20代のオーナー発見!
とある日曜日。クルマ好きの知り合いに会うため大黒PAに行ったところ、なんとW126が2台も停まっているではないか。
ちょうどこの企画の原稿を書いている最中だったのもあり、オーナーさんに話を聞きたいとしばらく見ていると、オッサンかと思っていたら、どうみても20代。さっそく話かけてみるとなんとW126のSクラスに乗っているという。
最初に話をした安田勝利さんは、1990年式の560SELオーナー。当時の人気色だったミッドナイトブルーの外装色と純正15インチホイールの組み合わせは、バブル時代にタイムスリップしたかのよう。しかし、年齢を訊ねたら、なんと1994年生まれの27歳。バブル未体験なのになぜW126なのか?
「うちの母がクルマ好きで、190Eに乗っていました。その影響から角目世代のメルセデスが大好きで、特にV8エンジンを積んだW126の560SELに一度乗ってみたいという憧れがあったので購入しました」。
今の560SELは2台目で、最初に乗っていたのは1988年式の560SEL。残念ながら昨年もらい事故で廃車となってしまったため、今年に入って1990年式の物件を新たに購入。2週間前に納車されたばかりだという。
「友人たちとロングツーリングをするのが好きなので、時間があればメルセデスで全国をまわっています。もう一台のC124のE320クーペに乗っているときは普通なんですけど、560SELに乗っていくと、トラックの運転手さんやガソリンスタンドなどで「懐かしいね、昔憧れたよ!」とよく声をかけられます」。
よく見るとトランクには自動車電話のアンテナが付いていて、ナンバープレートは自光式という往年の姿そのもの。声をかけたくなるのも当然だ。
それよりも驚いたのは安田さんの知識の豊富さと熱量。モデル名をコードネームで言うのはもちろん、ボディカラーも3桁のカラーコードで呼び、ディスコンになった年式などもスラスラ出てくる。まさに変態の領域だ。
さらに訊けば、弟さんもR129のSL320に乗っているという。まさに筋金入りのネオクラシック一家だった。
次にお話をした生方紀広さんは、さらに若い21歳! 生方さんが購入した1989年式の420SELは、これまた懐かしいAMG仕様。押し出し感満載のフルエアロ外装は、W126のもうひとつの正装だった。
それにしても、21歳でW126を所有するなんて、まるで高校野球で活躍してすぐにメジャーに行ってしまったようなもの。いきなり究極に行ってしまって大丈夫なのだろうか?
「普段の足は父が乗っていたボルボ940エステート クラシックで、自分が生まれたときからずっとそのボルボに乗っています。ネオクラシックが自分の基準になっているので、特に抵抗感はありませんでした。
妥協して変なクルマを買っても、結局愛着が湧いて手放せなくなってしまうので、それなら最初から良いクルマを買うのがベストだと思いました。直接のきっかけは、安田さんが560SELでツーリングに来ているのを見て刺激を受けたことです。
ちょうどイカツイ車両が欲しいと思っていたときに、安田さんに洗脳されて買ったというのが正直なところです」。
生方さんも納車からまだ2週間とのことだったが、運転していると周囲からかなり注目されていて、なんだか有名人になった気分になるという。そう、早くもW126の魅力に取り憑かれているのだ。
「ボルボ940に比べると、W126はパワーもボディ剛性も全然違います。特にコーナーでの安定感などがまるで違うので驚きました。まだ自分のクルマという感じはまったくしないですけど」。
ともに尋常でないクルマ愛を持つ2人が選んだクルマがW126というのは、偶然ではなく必然としか思えない。ネオクラシック時代のメルセデスの傑作を所有することで、普通では体験できないような濃密な世界をごく自然に楽しんでいるのだ。
バブルの帝王であるW126のSクラスは、今もなお特別な存在であり続けていることに驚くとともに、30年前のバブル当時に還ったような気分になり、とても懐かしかった。
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