ベンツのマイルドハイブリッドはマイルドじゃない!?
これに飛びついたのがEUのCO2排出量規制が待ったなしの欧州勢だ。
2021年までにメーカー平均CO2排出量95g/kmが義務づけられているのに、頼みの綱のディーゼルは例の事件で大失速。
かといってEVは間に合わないし、CO2排出量計算でPHVを優遇しても台数的にはたかが知れている。欧州勢は今そこにある量産車に対応可能な現実的ソリューションを切実に必要としているのだ。
最新のメルセデスベンツS450は、新設計の直6エンジン(M256)とともに48Vマイルドハイブリッドを採用して話題になっているが、これが48Vハイブリッドシステムの“ショーケース”といっていい。
なぜ“ショーケース”かというと、たぶんこれが48Vマイルドハイブリッドの“最高級品”と思われるからだ。
マイルドハイブリッドとはいってもベルト駆動のオルタネーターではなく、スターター兼用のジェネレーターはエンジンと9速ATの中間にマウントされる。
モーター出力は16kWもあるし、48Vリチウムイオン電池は容量1kW/hとプリウスの1.3kW/hにかなり近い。率直にいって「ちっともマイルドじゃないじゃん」と、個人的には思う。
ただ、このM256型エンジンはベンツがエンジン戦略をV6から直6へ劇的に転換する第一号。48Vマイルドハイブリッドの可能性を示すため、盛り込める技術要素はすべててんこ盛りで入れてきた、という印象だ。
トヨタがマイルドハイブリッドをやらない理由
もちろん、48Vマイルドハイブリッド採用の主眼は、エネルギー回生と加速アシストによる燃費向上だが、このS450では電動スーパーチャージャーによる低速域の過給ブーストという小技を追加してきている。
この電動スーパーチャージャーは0.3秒で7万rpm/1.4バールに達する強力なもので、モーターは最大5kWも消費する。
そういえば、同じく48Vマイルドハイブリッドを採用したアウディA8は、2kWのモーターを各輪に配した電動アクティブサスペンションを採用。
低コストが売りの48Vハイブリッドにこういうギミックを入れ込んでくるのが、欧州プレミアムのしたたかなところで、「けっして安さだけが取り柄じゃないよ!」とアピールすることを忘れていない。
いずれにしても、48Vマイルドハイブリッドの主戦場は、Sクラスのような高級車ではなく、もっとたくさん数を売る量産価格帯の車。そこでどのくらいの燃費向上効果があるかで真価が問われることになる。
この48Vマイルドハイブリッドをトヨタがどう考えているのか興味あるところだが、2017年11月の電動化戦略記者会見でボクが質問した時の答えは以下のようなものだった。
いわく「各国の環境規制にも影響を受けるので一概には言えないが、48Vマイルドハイブリッドについては、CO2削減の“費用対効果”という点であまり魅力を感じていない」のだそうだ。
ストロングハイブリッドに絶大な自信を持つトヨタだけに予想どおりのお答えだが、ストロングとマイルドの戦い、興味深く見守りたいと思います。
コメント
コメントの使い方