■交換前提のバッテリーとなると車両側、インフラ側ともに課題多し
そのうえで、現状、エンジン車からEVへの移行期間は、エンジン車とEVのプラットフォームを共用し、消費者の求めに応じて両方を販売しなければならない自動車メーカーがある。そうなると、エンジン車のパッケージングにも適応できるプラットフォームを使いながら、バッテリーパックを車載するとなると、その形状に制約を受ける。
EV専用プラットフォームなら、床一面に車載バッテリーを平らに載せるバッテリーパックでよいが、たとえばエンジン車と同じプラットフォームを利用するプジョー『e-208』では後席足元にバッテリーを置かない形状にしている。またそのほうが、後席の足元を広くする効果もある。
メーカーや車種によってバッテリーパックの形状が異なれば、バッテリー交換ステーションに保管するどのバッテリーも複数の種類の形状が必要だ。
たとえ同じ形状のバッテリーパックであっても、容量が異なる車種へは不十分であったり、過剰であったりしてしまい、それはバッテリーの使用料金にも関わってくる。保管すべきバッテリーの種類はますます増え、それぞれに余裕を持った数を保管しておかなければならないことになる。小容量のバッテリーパックを搭載する数で調整するという案もあるだろうが、複数の取り外し、取り付けには余計な時間も要するのではないか。
世の中のすべてのEVが、同じパッケージング、同じプラットフォーム、同じバッテリー容量であるなら、効率的な事業展開ができるだろう。だが、少なくとも、現状では世界の自動車メーカーが何もかも同じ仕様のEVを開発し、市販することは考えにくい。
またもし、それを実行するなら、世界のほとんどの自動車メーカーは存在理由を失い、一社の基準に沿った車体製造工場として従事することになるだろう。そのような自動車業界の展開は考えにくい。
ただし、今後、共同利用がクルマの常識となる時代が来れば、すべてが同じではないにしても必要な車型は数種類に絞り込まれ、稼働率を重視することからら車載バッテリーの交換への要望が出てくるかもしれない。
■リチウムイオン電池にも弱点アリ! その上手な使い方
次に、リチウムイオンバッテリーの使い方において、急速充電は適さないという根本的な課題もある。
スマートフォンもEVも、使っているリチウムイオンバッテリーの原理と特性は同じだ。劣化しにくく上手に長持ちさせるには、ゆっくり時間をかけて充電するのが望ましい。なおかつ、電気を使い切ってから満充電にするのではなく、使い切らないうちに補充し、また満充電にならないようにして使うのがよいとされる。
EVを上手に利用する人は、満充電にならないよう8割程度で充電を終了する設定をし、また電気を使い切る前に充電するようにしている。そして遠出の予定などがあるときだけ、満充電にして出かける使い分けをしている。
リチウムイオンバッテリーはまた、ニッケル水素やかつてのニッケルカドミウム(通称ニッカド)バッテリーと違い、電気を使い切らないうちに充電しても、メモリー効果と呼ばれ、満充電になり切らなくなってしまう弱点がない。電力を残したまま電気を補っても、満充電にすることができるのである。
結論として、出先で、食事をしたり買い物をしたり、仕事をしたり、そうした立ち寄り先で、200Vの普通充電をつぎ足しながらEVを使っても、不具合はない。わずかでもつぎ足しながら走れば、その分足を伸ばせることになる。急速充電ステーションに立ち寄る機会も減り、時間の無駄が解消される。
したがって、EVの充電社会基盤の正しい整備の仕方は、自宅の普通充電を基準にしながら、仕事先や商業施設などに普通充電をくまなく配備し、立ち寄った人が自由に使えるようにすることだ。
あとは、電気代をどのように徴収するかであり、それは認証式の充電器で電気料金を引き落としたり、あるいは販売する商品に上乗せしたり、数時間の電気量は大した金額にはならないと考え、割引サービスの一環として集客に利用してもいい。それは事業主の考え方次第だ。
EV利用にとっても、リチウムイオンバッテリーの劣化を抑える使い方においても、車載バッテリーを短時間で交換する手法は、必ずしも最適回答ではないのである。
コメント
コメントの使い方結局evの欠点を誤魔化す記事でありevご用記者記事ですね
「本筋は家で寝てる間に充電」は技術側のユーザーへの押し付けでしかない。
保有者はたまには遠出もしたくなるだろうし、その際にしばしば充電スタンドに長居しなければならないならEVは少なからず購入をためらわれてしまう。
あと、急速充電は、充電器の保有台数を増やす必要はあるものの、必ずしも必要ではない。
課題を挙げるのは大切だが、勝手に結論まで出してくれなくていい。