フルモデルチェンジ以上のフルモデルチェンジと言っていいだろう! 第2世代となった進化系e-POWERをひっさげて登場した新型ノートは、デザインも走りも安全性もコンパクトカーの常識破りのモデルだった。
文/塩見 智(フリーランスライター・日本カー・
オブ・ザ・イヤー選考委員)、写真/西尾タクト【PR】
初出:『ベストカー』 2021年4月10日号
■第2世代e-POWER搭載で劇的進化!
待ちに待った日産ノートのフルモデルチェンジ。ついに試乗する機会を得た。先代ノートは2012年発売。ダウンサイジングの考え方を取り入れた1.2L、3気筒エンジン搭載が話題となったが、2016年にe-POWERを追加したことでベストセラーに登りつめた。
激戦区のコンパクトカー市場を今後も戦い続けるためには新しいパッケージが必要というわけで、フルモデルチェンジとあいなった。
新型ノート、なんともハンサムじゃないか。有機的で滑らかな面で構成された外観は、発売が待たれる電気自動車のアリアにも似ている。つまりこれが日産の新世代デザインなのだろう。グリルも刷新されて健在。新しいデザインとなったロゴを掲げる第一号車となった。
室内はメーターがフル液晶となったほか、センターディスプレイが9インチへと大型化。置くだけ(ワイヤレス)でスマホを充電できるスペースもある。全体的に質感が上がった。下世話な表現をするなら「お金かかってそう」。
当然新型にもe-POWERが採用された。それどころか全モデルe-POWERとする潔さ。昨年登場したキックスで新しい制御が採用され、いわば1・5世代へと進化したe-POWERだが、ノートではその新制御に加え、モーターやインバーターも一新され、第2世代のe-POWERとなった。
走らせてすぐに気づくのが静粛性の高さ。まず発進してもしばらくの間、エンジンが始動しない。電気自動車のリーフと同じ感覚だ。
第1世代ができるだけ満充電の状態を保とうとする特性だったのに対し、第2世代はバッテリーの能力をもっと信じて大丈夫、すなわち常時満充電でなくとも大丈夫というデータが得られ、エンジンの始動頻度や稼働時間を減らしたという。だからすぐにエンジンがかからず静かなのだ。
さらにエンジンが始動してからの静粛性も大きく向上した。ルノーと共同開発したCMF-Bという新世代のプラットフォームが遮音や制振に貢献しているのだろう。
新しいプラットフォームは乗り心地のよさにも寄与している。路面の凹凸で発生する振動を上手に素早く抑え込む。コンパクトカーのレベルを超え、国産、輸入を問わずクラストップの快適性を得た。
さらに動力性能は誰が乗っても気づくレベルで向上した。最高出力、最大トルクともに向上したこともあるが、アクセル操作に対しトルクが素早く立ち上がるようにした新制御のおかげだろう。例えば交差点右折時、対向の直進車が途切れた瞬間にサッと発進させたい時などに頼もしい。
アクセルオフで強い減速を得られ、ブレーキペダルを踏む機会を減らせるのはモーター駆動車の強みだ。ペダル踏み換えの機会が減るので楽ちんだし安全。完全停止するには一度きちんとブレーキペダルを踏む必要はある。
ただしオートブレーキホールドを作動させていれば停止後、ブレーキペダルから足を離しても停止が保持されるので便利。そして、従来のe-POWERにはなかったクリープ機能が備わり、駐車場等での操作のしやすさも向上した。
■大きく進化したプロパイロット
先進運転支援システムのプロパイロットも大きく進化した。システムが先行車両を検知し、一定の車間を保って追従走行してくれるのはこれまでどおり。
コンパクトカーの同種の機能は、車間が開くとエンジンをうならせて加速し、車間を詰めようとしがちだが、ノートはモーター駆動で変速もないので、うなりを上げることなく車間をキープしてくれるのがスマートだ。
車両が車線の中央を維持すべくステアリング操作をアシストしてくれる機能についても、早くからプロパイロットを実装している日産車には一日の長がある。アシストがベテランドライバーのようにさりげないのだ。
映画『ゴースト』でデミ・ムーアの陶芸作業を、幽霊となったパトリック・スウェイジが背後からそっと手を添えて手助けするあの感じ。古過ぎてわからない? 若者はググってくれ。
首都高の曲率のきついカーブを走行中、設定した速度よりも自動的に速度が下がった。新機能のナビリンクだ。プロパイロットとナビの地図データが連動し、カーブの手前で車速を下げてくれ、通過後は自動的に設定速度に戻ってくれるからありがたい。

新型ノートは最大の武器であるe-POWERとプロパイロットを大幅に進化させながら、スタイリング、質感、動力性能、快適性、安全性……etcつまりは全方位的に脱コンパクトカーレベルとなった。でもお高いんでしょう?
いえいえ、電動化比率を高める日産の方針に従い純内燃機関車を廃止したぶん、スターティングプライスは上がったが、装備が同等となるライバルの上級グレードと比較すれば大きな競争力をもっていることがわかる。やったな日産!