■クルマを強烈に育てたニュルブルクリンク
901活動の代表作、といえば、R32スカイラインGT-Rだろう。
日産の走りの理念である「意図しない動きはなく、ドライバーの意のままにクルマが動くこと。それによって、ドライバーへのインフォメーションが増やし、人馬一体感(ファントウドライブ)を得る」を達成する。
そのため、R32スカイラインGT-Rでは、フロントサスには短いアッパーアームとサードリンクを用いたダブルウィッシュボーンを採用。
リアには、マルチリンクサスペンションを採用し、さらにはスーパーHICASという後輪操舵機構も進化させた(旋回時、一瞬後輪が旋回外側を向く、その後、イン側を向く。曲がりやすさと安定性を狙ったアイテム)。
また、それまでは、ただ走るだけ、であったニュルブルクリンクだったが、このR32スカイラインGT-Rからは、本格的にテスト走行が行われた。
ニュルはお金を出せばだれでも走れるが、アップダウンが強烈なニュルを、誰よりも速く走るのは非常に難しい。R32のテストチームは、本格的なテスト走行をやって初めて、その難しさを痛感したという。
その際、日産が走りの参考車として選んだのが、901活動の目標宣言「catch the GTi and 944」にも挙げていた、ポルシェ944ターボだった。
当時「世界一ハンドリングの優れたクルマ」とされていた944は8分40~45秒で走っていた。日産は、「それを越えれば世界一」と定義した。開発初期では、一周走るごとに足回りを分解し、耐久性をチェックするところから始めたそうだ。
他社メーカーからは、「2周目が走れないクルマ」として、指をさされて笑われたというが、その成果は徐々に表れ、開発後半にR32 GT-Rが刻んだタイムは8分24秒。当時の量産車世界最速タイムをアッサリと刻んで見せた。
そのうち、ニュルでは他社メーカーのクルマを乗るプロドライバー達が、GT-Rのテストカーに道を開け始めたそうだ。その瞬間、開発チームは「求めるGT-Rに近づいた!!」と実感できたそうだ。開発チームとしては、この上ない喜びだっただろう。
■901で誕生した素晴らしいハンドリングのクルマ達
901活動の結果として、日本向けのR32スカイラインGT-Rのほかにも、北米向けのZ32フェアレディZ、欧州向けのP10プリメーラなど、いまでもその名を聞くことがあるクルマたちが誕生した。
●「FF車のハンドリングを極めた」P10プリメーラ
欧州市場へ投入することを目的に、スタイリング、動性能、実用性、パッケージングなど、欧州車を強く意識して開発。
901運動から生まれた、フロントマルチリンクサスペンションは、卓越したハンドリングと評価され、「(乗り心地を度外視すれば)欧州車を超えた」と評されたほど。P10プリメーラは、好調な販売台数を記録、同時に日産は、日本及び欧州で、「技術の日産」のイメージを定着させることにも成功した。
●「ワイド&ローのコンセプトを作った」Z32フェアレディZ
いかにもスーパースポーツカー、といった雰囲気漂う、低いボディスタイルのZ23フェアレディZ。
当時のスポーツカーの定義であった、ロングノーズ・ショートデッキを改め、新たに「ワイド&ロー」といったデザインコンセプトを織り込んだ。
3.0L V6ツインターボのVG30DETT(280PS)を搭載し、電子制御式4ホイールステア(4WS)のスーパーHICAS(ハイキャス)を、ツインターボモデルに装備。Z32はポルシェなどの欧州製スポーツカーに対抗する高級スポーツカー(といってもはるかに安い)として発売され、大ヒットをした。
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