2021年2月17日、テスラモーターズジャパンが大幅な値下げを行った。モデル3のスタンダードレンジプラスは、以前は511万円であったが、82万円値下げされて429万円になった。
同様にリチウムイオン電池の容量に余裕を持たせたモデル3のロングレンジは、655万2000円から、156万2000円値下げされて499万円。ちなみに717万3000円のパフォーマンスについては価格の変更はなし。
それにしても、テスラモデル3はなぜこのような大幅値下げを行ったのか? 最も大きな理由は日本仕様の生産拠点を北米のカリフォルニア州フリーモント工場から中国の上海ギガファクトリーに移された。その結果、日本への輸入に要する時間、輸送費用を含めた各種のコストが節約されている。
搭載されるリチウムイオンバッテリーは、カリフォルニア州フリーモントの工場で生産されていた時(2020年12月納車以前のモデル)はパナソニック製のバッテリーだったが、上海ギガファクトリー生産のモデル3が、中国の車載用電池最大手であるCATL(寧德時代新能源科技)製のリチウムイオン電池(コバルトを含まないリン酸鉄LFP電池)に切り替えたために、大幅なコストダウンが実現したということだ。
このCATL製のリチウムイオン電池はスタンダードレンジプラスに採用され、ロングレンジやパフォーマンスはLG化学製とされる。
補助金を差し引くと、なんと300万円代でテスラが買えるのである。この値下げの話が出るまでは、「テスラはいいけど500万円代からでしょ、無理無理」と敬遠していた人達が、「ちょっと視野に入ってきたかも」と、そわそわしているのではなかろうか。
そこで、改めて日本のEVについて考えてみた。日本の自動車メーカーから、EVの1充電あたりの走行距離について、「1日の走行はせいぜい約40kmだからEVの1充電あたりの航続距離は200~300kmで充分」とさんざん聞かされてきた。
本当にそれでいいのかと疑問に感じるユーザーもいることだろう。確かに1日約40kmも走らないから、メーカーは1充電300kmあれば充分だろうというのはわかる。
しかし、EVを実際に使う、これから買いたいと思っているユーザーの多くは、実際にはそこまで走らなくても、電欠の不安のない400~500kmは欲しいと望んでいる心理を読み取っていないように感じるのだ。
そこにテスラである。特に航続距離の面では一番安いテスラモデル3のスタンダードレンジプラスでもWLTCモードで448km、ロングレンジでは580kmである。EVを買うユーザーの深層心理をとても理解しているような気がするのだ。
そんなテスラに対抗する主な日本車のEVは、日産(リーフやアリア)、ホンダ(ホンダe)、トヨタ(UX300e、シーポッド、3月30日に発表されるレクサスLF-30)、マツダはMX-30 EV、トヨタとスバルが共同開発したEVのSUV(4月の上海モーターショー発表)といったラインナップ。
はたして、テスラモーターズに対して、日本のEVを作っている自動車メーカーが見習うべきところはあるのか、モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。
文/渡辺陽一郎
写真/テスラモーターズ ベストカー編集部 ベストカーweb編集部
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