■「レベル3」でも走行中「レベル0」になるということが重要
次に筆者が「気になった点」をレポートします。
トラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)と命名された自動化レベル3技術は、冒頭に挙げた3つの部分的な解放(フットフリー、ハンズフリー、アイズフリー)が注目されています。
しかし、「意識すべき2つ目」に挙げたように、自動化レベル3が稼働中であっても状況によりTORを伴って4段階のシステム制御を行き来します。よって、その遷移には注意を払うことが必要です。
4段階のシステム制御は次のとおりです。
1自動化レベル0/手動運転(ドライバー責任)
2自動化レベル2/ハンズオン(ドライバー責任)
3自動化レベル2/ハンズオフ(ドライバー責任)
4自動化レベル3/3つの解放(システム責任)
今回の試乗では、4→2へシステム制御が移行し、自動化レベル3から自動化レベル2へ1段階ダウンする事象が頻繁に発生しました。しかしHonda SENSING Eliteの名誉のために付け加えると、制御の精度が低いからではなく、こうしたシステム設計の上に自動化レベル3技術が成り立っているためで、このレベルダウンは正しい制御です。
具体的にどんなシーンで4→2が発生するかといえば……。
あ/自車がノロノロと進む渋滞した本線上を走行中
い/合流路から速い速度で車両が接近
う/その車両が車間距離をほとんどとらずに自車前に割り込み
ドライバーに代わりシステムが周辺の安全監視を行なっていた4の最中に、ブレーキ操作による減速が必要なほど急な車両の割り込みが発生したと考えてください。この状況では、高い確率で4→2へとシステム制御か移行して自動化レベルがダウンします。ここで大切なことはシステム責任であった4(自動化レベル3)から、ドライバー責任となる2(自動化レベル2)へと遷移することです。
■ハンドルがオレンジに光り、「ハンドルを持って!」と表示
このとき車内で起こるTORは、視覚情報としてこれまで水色に点灯していた2カ所(グローブボックスとナビ画面上部)のLEDが反対色のオレンジ色になり、ステアリングのLEDはオレンジ色の点滅へ。ステアリング越しのディスプレイには、「ハンドルを持って!」というアイコン表示されます。同時に聴覚情報としてチャイムが連動して鳴り響き、これらはドライバーがシステムからの呼びかけに応じて、ステアリングを握って回避動作がとれるよう準備が整うまで続きます。
2の状態で危険から遠ざかったとシステムが判断した際には、2→3→4へと段階的にシステム制御を向上させ、システム責任の自動化レベル3走行が再開されます。
仮に4、もしくは2の状態でドライバーがブレーキ操作を行なえば、システム制御は1の段階、つまり自動化レベル0まで一気にレベルダウンし手動運転となり、システムは稼働を停止します。例えばACC稼働時にブレーキ操作でシステムが解除されることと同じ理屈です。状況が好転した時点でドライバーが周囲の安全を確認し、改めてスイッチを2回押すことでシステムは再稼働します。
上記の割り込み例以外にも、4→2へのレベルダウンは、前走車の前で発生した割り込みが原因で前走車が強めのブレーキをかけて減速したり、隣車線を走る車両が急接近したりした場合にも発生します。
また、「意識すべき三つ目」でお伝えしたとおり、Honda SENSING Eliteでは、この2の段階での精度が飛躍的に高められています。ミリ波5個/ライダー5個/光学式カメラ6個/超音波ソナー12個の各種車載センサーにはじまり、HDマップやGNSSとの照合による正確な自車位置把握……。これらは自動化レベル3を支える要素技術でありながら、たとえば自動化レベル2のACCやLKASの精度も高め、前述した1~4の行き来で起こる技術の谷間をなだらかにして、スムースな運転支援や自動運転を行ないます。
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