大型SUVもCVTを採用する時代 CVTは日本だけのガラパゴス時代は終わったのか?

■CVTのメリットを活かし、弱点を克服した日本メーカー

RAV4のダイレクトシフトCVTのシフトレバー
RAV4のダイレクトシフトCVTのシフトレバー

 CVTは変速による減速比の変化量が大きいことが、最大の武器だ。2つのプーリーに掛かっているベルトが、プーリー幅の変化により接触する位置を変え、実質的なプーリー径を変えることによってシームレスで幅広い変速を実現している。

 CVTには、ほかにもいろいろな構造の種類があるのだが、クルマの変速機として使われるのは、金属のプーリーで金属製のベルト(あるいはチェーン)を挟むベルトプーリー型だ。

 アイシンやジヤトコ、ホンダ(内製)などCVTを開発、生産しているメーカーは、基本的には同じ構造の金属ベルト式CVTを採用していながらも、そのプーリー幅制御などに独自のノウハウを持っている。

 オランダのヴァンドーネが開発したベルトプーリー型CVTは、金属エレメントと薄板を組み合せたスチールベルト式CVTとなって日本の変速機メーカーが熟成させたことで、今につながったのだ。

 他国のメーカーが変速フィールの鈍さや、耐久性を問題視して熟成を諦めていった中で、日本だけが辛抱強く開発を続け、小さな改善の積み重ねで信頼性や燃費性能、加速フィールなどを改善していったのである。

 言い換えれば、日本のドライバーがCVTを許容しなければ、今のような状態にはなっていないと思う。壊れなくて、燃費が良ければいいというズボラなオーナーがCVTを選んで、乗り続けてくれたからこそ、CVTは存続して進化することができたのだ。

 それくらい、CVTのフィーリングは人間の感性にそぐわないものであったが、近年はそれも随分改善された。それはCVT単体での改良だけでなく、エンジンなど周辺機械の改良による影響も少なくない。

 どういうことかというと、昔はエンジンの燃費性能が高くなかったためにCVTで燃費を稼ぐ比率が高かった。

 そのため加速時にも負荷を抑えるために減速比を大きくして、徐々に減速比を小さくしていく制御を取っており、全負荷の全開加速時にもそんな制御だったことから、エンジン回転に対して車速の上昇が緩慢で、運転していて違和感やストレスを感じたものだ。

 しかし最近のCVTは、どれも制御が見違えるように良くなった。加速時もいたずらに変速比を変えることなく一定以上の加速時には減速比を固定することで、エンジンの回転上昇にあった加速Gを感じさせる。

 これはエンジンの燃費性能が向上したことにより、変速機側で頑張り過ぎなくてもよくなったことも大きい。結果的に燃費への悪影響を抑えながら、加速フィールも良くなったのだ。

■副変速機付き、発進ギア/巡航ギア付きなど発展型CVTも

ダイハツのD-CVTの解説図
ダイハツのD-CVTの解説図

 CVTは変速機としてはシンプルな構造ながら、単純にレシオカバレッジを拡大したり損失を低減するだけでなく、新たな機構を追加することで、より燃費性能を高める工夫も盛り込まれている。

 日産はジヤトコと共同開発して、リバースギア用に組み込まれていた遊星ギア機構にクラッチを追加することで、2段変速機構を兼ねさせ、副変速機付きCVTとしてレシオカバレッジをさらに拡大させている。

 これはスズキの軽自動車にも採用されているものだが、副変速機が作動する時には、プーリーは逆に動作するなど、制御が複雑で緻密だからこそ、実現できた機構だ。

 さらにトヨタは発進ギアを別に設けて、プーリー比が最大となる領域をカットすることで、損失を低減した発進ギア付きCVTをアイシンと開発して搭載している。

 ダイハツは逆に、巡航時に固定ギアに駆動力伝達を切り替えることで、駆動損失を低減するCVTを開発、量産車に採用している。

 チェーン式は基本的に縦置き変速機用でジヤトコは横置きCVTにチェーン式を開発しているが、コストと騒音の問題から普及には至っていない。

 ベルト式は連続的にコマがプーリーに当たっているため、静粛性が高いのだが、チェーン式はチェーンのピンが断続的にプーリーに当たるため、どうしても歯打ち音のようなノイズが発生してしまうのだ。

 さらに金属ベルト式が改良によって、チェーン式に匹敵する伝達トルク容量を実現してしまったから、なおさら出番が無くなってしまった感がある。

 劇的に進化したといえるのがスバルのリニアトロニックCVTだろう。先代レヴォーグのレシオカバレッジは6.422だったが、新型では8割の部品を刷新し、8.098に拡大。

 レシオカバレッジを拡大したことにより、発進時のダイレクトな加速、高速巡行時の燃費が向上したほか、CVT独特の金属音も低減。

 さらに8速のマニュアルモード変速も可能となった。変速ショックのない滑らかな加速とリニアなレスポンスが光るこのCVTはATでいうと、8速AT以上の実力を持っているといっていいだろう。

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