自動運転技術は【日本の危機】を救えるか【自律自動運転の未来 第6回】

■日本では国策として自動運転を推進

 ASVを主導してきたのは旧運輸省(現国土交通省)であり、いわゆる国策です。「ABS」や「HIDヘッドライト」、さらには「衝突被害軽減ブレーキ」などは、過去、ASVによって広められ、実用化に至っています。

 乗用車だけでなく、大型トラックやバスなどの商用車、二輪車などASVの守備範囲は公道を走る乗り物の大部分に及びます。また、各国各地域の国際基準とも調和して、ガラパゴス化ではない真のグローバル戦略が採られてきました。

 そして、このASVが掲げた安全の哲学は2014年度よりスタートした内閣府SIP(戦略的創造イノベーションプログラム)「自動走行システム」にも受け継がれています。

 SIP自動走行システムは、自動運転社会の構築に向けた旗振り役となり、社会的受容性の向上に注力。発展させるべき分野を「協調領域」と「競争領域」に切り分け、無駄をなくし、効率良く開発を進めてきました。

 具体的には、自動運転車両の走行に不可欠な高精度情報のひとつ「ダイナミックマップ」を協調領域として、自動車メーカー各社での技術開発は競争領域として、意見のとりまとめや法整備の面から実用化の後押しを行なってきました。

自動運転領域に関しては、競い合うところは競い合い、協調するところは協調して技術が進歩してきている
自動運転領域に関しては、競い合うところは競い合い、協調するところは協調して技術が進歩してきている

 高精度地図である「HDマップ」は自動運転車両の羅針盤となり自動走行を支え、先進安全技術の分野では、例えば車線中央維持機能などの精度を高めます。

 また、社会インフラ整備を促進する「3次元点群データ」には道路区域と民有地の境界、車道と歩道の境界などが含まれ、災害時には避難経路の構築にも使われます。

■自動運転で超高齢社会をより過ごしやすくする

 現在、日本が抱える課題のひとつに、高齢化社会、その先の超高齢社会があります。

 この課題に対し、先進安全技術や自動運転技術がどんな貢献ができるのでしょうか? 高齢者(65歳以上)や後期高齢者(75歳以上)のドライバーが運転する車両が第一当事者となる交通事故を例に考えます。

 公益財団法人・交通事故総合分析センター発表の「年齢層別・当事者別死亡事故件数(第1当事者)2018年」によると、25~64歳までの死亡事故件数は二輪/原付/自動車の3つ合わせて1816件。この1816件を運転免許証保有数(25~64歳まで)で割ると0.3件です。

 これが65~69歳になると同じく3つ合わせて251件で0.3件/件、70~74歳になると同249件で0.4件、75~79歳になると同208件で0.6件と推移します。

 75歳以上の後期高齢者となると、運転免許証保有者あたりの事故件数は25~64歳の2倍(0.6)となりますが、件数そのものは40~44歳の約81%、45~49歳の約77%、50~54歳の約75%といずれも低い傾向です。「高齢ドライバー=事故が多い」というイメージがありますが、統計上はこのように表われます。

 また、運転免許証の保有率からみると、日本の高齢化が一層浮き彫りになります。75歳以上が5,638,309人で全保有者の約6.8%であるのに対して、40~44歳が8,524,016人で約10%、45~49歳が9,147,989人(最多保有者層)で約11%、50~54歳が7,842,227人で約9.5%です。

国土交通省自動車局が警察庁資料をもとに作製したグラフ。高齢者が「第1当事者」となった事故の割合は増加傾向にある。ただしそれは「高齢者の免許保有数の割合」や「全体の割合との比較」も見る必要がある(クリックで拡大)
国土交通省自動車局が警察庁資料をもとに作製したグラフ。高齢者が「第1当事者」となった事故の割合は増加傾向にある。ただしそれは「高齢者の免許保有数の割合」や「全体の割合との比較」も見る必要がある(クリックで拡大)

 そして、団塊ジュニア世代と重なる45~49歳の層(筆者はまさにココ)が高齢者となる際には、現在よりも保有者数だけでなく、クルマ好きが多い世代であることから、保有率も高止まりの傾向が続くと予想できます。

 改めて数字はタテ・ヨコ・ナナメから読み込まないと真実は見えてこないと思う一方で、65歳以上の高齢ドライバーに対しては、国が中心となって行なっているサポカー(セーフティ・サポートカー)制度が事故数低減につながっていることが推察できます。

次ページは : ■踏み間違い事故にも自動運転技術で

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