自動運転技術は【日本の危機】を救えるか【自律自動運転の未来 第6回】

■踏み間違い事故にも自動運転技術で

 サポカー制度は「サポカー補助金」がその財源(総予算は約 1,127 億円)です。サポカー補助金は一定の条件を満たした場合、衝突被害軽減ブレーキなどをはじめとした先進安全技術を搭載した車両購入時に補助金(現在は最大10万円)が支給(申請者へ振り込み)されます。

 なお、使用者名義の変更は認められず、購入した新車は1年間使用することが義務づけられ、1年未満の手放し(使用者変更など)の場合は、補助金は返納することが定められています。

 また、2021年11月以降、日本で発売される新型車には衝突被害軽減ブレーキの義務化が適応されます(継続生産車は2025年12月~)。まずは国産車から義務化され、2024年7月1日からは輸入車にもその適応範囲が拡げられます(輸入車の継続生産車は2026年7月~)。

 アクセルとブレーキのペダル踏み間違い……。これが引き金となる事故の削減も喫緊の課題です。統計上は、75歳以上で踏み間違いによる事故件数が増えていますが、昨今では駐車場やその付近でもっとも多く発生していることがわかってきました。

 走行速度が遅く、頻繁なシフトレバー操作が重なり、目視による安全確認のため上半身を捻転させるなど、油断/不注意/不安定な姿勢が重なって踏み間違い事故が誘発されています。

 こうした実状に対し、先進安全技術の分野では超音波ソナーや光学式カメラを使い、自車前方や後方に認識できる物体がある場合はアクセル操作をキャンセル、もしくはペダルを全開にしたとしても微速に留め、場合によってはブレーキ制御を用いて事故を抑制します。

 意図しない加速を抑制することから、これらの先進安全技術は「加速抑制システム」などと呼ばれます。同システムの効果は高く装着率も高まっているものの、車載センサーが対象を認識していることが作動の第一条件であり、何もない場合には稼働しません。ここが一番の課題でした。

「アクセル見守り隊」は、後付けの踏み間違い防止装置のひとつ。停車中または徐行(10km/h以下での前進・後退)中にアクセルペダルが急激に踏み込まれた際、急発進を防止(クリープ現象により車両はゆっくり前進または後退)
「アクセル見守り隊」は、後付けの踏み間違い防止装置のひとつ。停車中または徐行(10km/h以下での前進・後退)中にアクセルペダルが急激に踏み込まれた際、急発進を防止(クリープ現象により車両はゆっくり前進または後退)

 そこでトヨタでは、新車に対する「プラスサポート」、販売済み車に対しては「踏み間違い加速抑制システムII」として、自車前方や後方に何もない場合でも稼働する新たな技術を開発し2020年7月から実装しています。

 これまでのシステムでは作動しなかった対象物が直近にない場合であっても、過去の走行データをもとにした「踏み間違い推定アルゴリズム」によって不要な急アクセルを検知し、可能な限り事故を抑制します。

 ここでは自動運転技術の開発で培われたビッグデータとの照合フローが効果を発揮し、ドライバーが本当に踏み間違いをしている状況を正確に判断して制御に活かしています。

■運転免許と自動運転

 運転免許制度と自動運転の関係、ここはどう考えるべきでしょうか?

 MT免許からAT限定免許が派生したように、「自動化レベルに応じた限定免許なるものが有効ではないか……」、そんな意見も出始め、すでに政府では、自動運転技術の普及に合わせた運転免許証のあり方が検討されています。

ソニー損害保険が2021年1月5日に発表した「2021年新成人のカーライフ意識調査」によると、2021年の新成人の運転免許保有率は51.3%で、マイカー所有率は14.4%だった。まだまだ半数以上の若者が運転技術を取得する。自動運転技術はその免許制度にも影響を与える
ソニー損害保険が2021年1月5日に発表した「2021年新成人のカーライフ意識調査」によると、2021年の新成人の運転免許保有率は51.3%で、マイカー所有率は14.4%だった。まだまだ半数以上の若者が運転技術を取得する。自動運転技術はその免許制度にも影響を与える

 筆者の意見としては、1.自動化レベル3以上の車両であれば、2.制限速度の低い一般道路を、3.日の出から日没までの間だけ運転できる、そんな制度が第一段階として有効ではないかと考えています。

 ただし、自動運転車両向けの免許制度が確立されたとしても、自らステアリングを握って運転操作を行なう可能性がある場合には(例/自動化レベル3のTOR)、飲酒運転や居眠り運転は絶対にNGです。

 また、これから交通社会にデビューする、いうなれば自動運転社会に生きる未来のドライバーさんたちのためにも、現行の教習制度には改革が必要でしょう。

 まずは、自動運転の前段にあたる先進安全技術、とりわけ普及率が高まっている衝突被害軽減ブレーキを教習項目に追加すべきと考えています。この場合、学科だけでなく、技能も含めた追加が重要です。

次ページは : ■自動運転技術は「確実に停まるブレーキ」ではない

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