「渋滞吸収走行」を身に付けよう!!
「渋滞吸収理論」という言葉を聞いたことがあるだろうか。某漫画の「公道最速理論」に似た響きだが、「渋滞学」を研究している、東京大学先端科学技術研究センターの西成活裕教授のチームによって提唱され、JAFと共に社会検証実験も行われている。
日本物理学会誌に掲載された西成教授の論文によると、およそ1kmあたり25台以上に増えた状態が「渋滞」であり、車間距離でいえば40メートルにあたる。
この「40メートル」の目安となるのは、片側2車線以上ある道路において、追い越し車線と走行車線を区切っている、白い破線。「車線境界線」といわれるものだが、この車線境界線は、8メートルの白線と12メートルの空白区間で構成されており、合計で20メートル。この組み合わせのふたつ分よりも車間が詰まってきたら渋滞、ということだ。
論文のなかで西成教授は「渋滞吸収走行」というものを提唱している。これは、十分に車間距離をとって走行し、交通量が増えてきた時点で速度を抑え、車間を詰めすぎないように走ることだ。
この車間距離が「クッション」の役割をはたし、前のクルマが大きく減速しても、ブレーキを踏むことなく(または踏む頻度を減らし)、速度を保って走行することができる、というもの。ポイントは以下の4つだ。
1.渋滞が近づいてきた、と思ったら、少し速度落として、渋滞への到着時間を遅らせる
2.渋滞に遭遇したら、車間距離を十分に取り(前に入られても良い)、一低速で走行する
3.前方の不用意なブレーキなどによる流れの淀みを自車により吸収し、後続への渋滞を伝搬させないようにする
4.前のクルマが動き出したら遅れずについていく(2~3台前のクルマをみて予測するとよい)
安全運転にもなり、燃費の改善にも!!
JAFと共に実施した検証実験でも、この渋滞吸収走行による効果は、実証されている。十分な車間距離は、前方車の急ブレーキや急な割込みにも落ち着いて対処できるため、安全運転にもなり、さらには燃費の改善にもつながる。
この渋滞吸収走行をするクルマが複数台いれば、これまでよりも渋滞の距離を短くできる可能性があるという。ただし、5km以上渋滞がつながると解消は難しくなるそうで、早いうちから渋滞吸収走行を心がけるのがポイントだ。
実はこれ、アリの動きがヒントになっているという。アリは混んでくるとお互い詰めなくなるそうだ。クルマは混んでいても、どんどん車間を詰めて流量を落としてしまうが、アリは詰めないことで流量を維持しているそう。やはり、自然の知恵はすごい。
巡り巡って自分にも恩恵があるはず!!
トラックドライバーが、渋滞時に車間を大きくとり、たとえ前に入られても、とろとろと動き続けている様子を見たことがあるだろう。一度停止すると再発進が大変、発進加速の衝撃を防ぎたい、燃費改善など、理由はいろいろであろうが、経験的に、トロトロ運転が渋滞解消には効く、というのを理解していて実践されている、ということもあるだろう。
渋滞吸収走行は、自車がいち早く目的地に到着する裏ワザでない。後続車が少しでも楽になるように行うものだ。この走行に協力するには、前に入られても車間を空け続けるモチベーションが必要となる。
すべてのクルマがこの渋滞吸収走行をすることはなくても、一台でも増えれば、巡り巡って自分にも恩恵がある可能性はあるだろう。この渋滞吸収走行が、ドライバーのマナーとして定着すると、国内の交通事情は、さらに快適なものとなるだろう。
コメント
コメントの使い方トラックドライバーの目線からの記事も多く出していただけると嬉しいです。大型トラックのサイドミラーは乗用車に比べて凸面鏡の角度が大きいです。乗用車等は小さく見えます。 夜間や昼間の雨の日はミラーに水滴、トンネルの中の無灯火やスモールランプだけで走行する乗用車、トラックのサイドミラーからの視認は極めて低下します。凝視しないと見えない時もあります。スピードを出して走行してくる乗用車もしかりです。