国土交通省が2022年4月にスタートする新たな首都圏の高速道路料金について、改定した「首都圏の新たな高速道路料金に関する具体方針(案)」を公表した。そして、この案には首都高の料金が実質的な値上げになることも盛り込まれている。
ドライバーにとって高速料金の値上げは「またかよ~!」と実に腹立たしいももの。今回の値上げはちゃんとした理由があるのものなのか? それとも最近収入が減ってるから値上げしたいだけじゃないの? といったところが気になるところだ。
いまさら値上げする理由は何か? 今回の高速料金改定の狙いについて首都高研究家の清水草一氏に深掘り解説してもらった。
文/清水草一
写真/AdobeStock(トビラ写真=ふわしん@AdobeStock)
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■首都高の料金は上限が1320円から1950円に値上げされる
国土交通省は、2022年4月にスタートする新たな首都圏の高速道路料金について、3月12日に公表した。この案には、首都高の料金の値上げについても盛り込まれている。
案によれば、ETC普通車の場合、距離単価はそのままで、上限料金が1320円から1950円に値上げされる。これまでは35.7kmで1320円になり、それ以上走っても料金は据え置きだったが、1年後には上限が55kmの1950円に変わるということだ。
現状はまだ案の段階だが、激しい反対運動も起きていないので、ほぼ決定と見ていいだろう。
いったいなぜ、いまさらまた値上げするのか。そしてなぜ1950円なのか。
「なぜ」については、「より公平な料金体系を実現するため」とされている。
■上限引き上げは激変緩和措置によるもの
首都高の料金には上限があるが、NEXCOの高速道路には上限はない。つまり、長距離を走る場合は首都高のほうが単価が安くなる。現状だと、首都高最長の86.6km走ると、NEXCOの大都市近郊料金の半額以下になる。
「首都高のほうが安いなんて、まさか!」と思うかもしれないが本当だ。86.6kmをNEXCOの大都市近郊区間料金で計算すると、2980円になるのだ。
今回、上限が1950円に設定されたのは、5年前に上限が1300円に設定された時と同様、激変緩和措置によるもので、「従来の1.5倍程度まで」という目安によるものだ。
もともと5年前に、首都高の料金が300円から1300円まで(現在は消費税値上げによって1320円まで)に改定されたのは、外環道や圏央道を迂回しても割高にならないよう、首都圏の高速道路料金を統一化し、起終点が同じならどのルートを通っても料金を同じにするためだった。
それまでの首都高距離別料金(500円から900円)では、迂回するより首都高を突っ切ったほうが安くなってしまい、迂回が促進されず、渋滞も緩和されない。
しかしこの料金体系の導入によって、そうした事態は回避された。首都高の上限料金は900円から1300円へ値上げになったが、短距離は500円から300円に値下げになったし、圏央道の料金も下げられたので、トータルでは値上げとは言えなかった。
むしろ私としては、NEXCOと首都高の垣根を超えた起終点同一料金の実現は、「夢にも思わなかった理想的な料金体系」だった。
これによって、圏央道内側の交通は平準化が進み、首都高の渋滞は緩和され、逆に外環道や圏央道は交通量が増えて渋滞が増加したが、トータルでは大きな成果があったと考えている。
今回の値上げはこの延長線上にある。前回の改定から5年を経たので、そろそろ激変緩和措置を緩め、上限料金をもう一度約1.5倍に引き上げようというものだ。併せて、外環道千葉区間の開通に鑑み、そちらに迂回した場合の割引も新たに導入される。
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