■唯一無二の個性で「先手」を奪ったデリカD:5
ミニバンでありながら、本格クロカンとしての走行性能を持つ多機能車が三菱 デリカD:5だ。7人乗りのクロカンという点で、ランドクルーザープラドとライバル関係になることが多かった。
デリカD:5は、家族で使えるミニバンでありながら、高いオフロード性能を持ち合わせる、唯一無二のクルマである。購入層はミニバンユーザーだけでなく、クロカンを好むユーザーにも及ぶ。
トヨタ店からはプラドのほかにも、エスティマやアイシスといった、ミニバンの顧客も奪われた。ミニバンとクロカンの境界線を超えて混じり合った、まさに「クロスオーバー」なクルマがデリカD:5だ。
カテゴリーの境界に、新たな車種をラインナップするのは、トヨタも得意である。しかし、クロカンとミニバンの間に関しては、三菱に先手を取られ、デリカD:5を追従するクルマは現れていない。
■商品力では勝てないと脱帽させられたフリード
コンパクトカーでは小さい、しかしミドルサイズミニバンに乗るほどでもないというユーザーに、「ちょうどいい」クルマ。コンパクトミニバンは可愛らしいクルマが多かったなか、お父さんが乗っても違和感がないのがフリードだ。
日本の道路事情に合わせたボディサイズと、4人家族で子供がベビーカーやチャイルドシートなどを必要とする年齢でも、余裕を持って乗れる室内環境がある。現代日本のファミリーカーとして、お手本のようなクルマだ。筆者自身、ヴォクシーやシエンタを販売していて、商品力では勝てないなと感じた。
トヨタは2015年にシエンタをフルモデルチェンジして反撃するも、翌年にフリードがモデルチェンジする。現代の核家族に「ちょうどいい」クルマは、やはりフリードだと思う。
■86をもってしても「負け戦」になったスイフトスポーツ
小排気量のハッチバックで、クルマを操作する楽しさを与えてくれるクルマであり、比較的安価で、手が届きやすいスポーツモデルがスイフトスポーツである。
ライバルと言うより、目指すべき形ともいえるだろう。そもそも、トヨタには対抗馬がいないように感じてしまうからだ。86がデビューした頃、スイフトスポーツと競合になることが何度かあったが、そのほとんどが負け戦であった。
200万円台で1.6L(現行は1.4Lターボ)の気持ちよく回るエンジンと、回頭性のいいハンドリングが手に入る。好みによってはマニュアル車を選択することもでき、後席も荷室の積載性も犠牲にすることはない。スイフトスポーツは、「安かろう悪かろう」ではなく「安くて良いもの」そのものだ。
GRヤリスが登場し、ホットハッチとしては対抗できるものの、価格は「RS」で265万円、「RZ」では400万円を超えていく。販売面でライバルになるには、もう少し値下げが必要になるだろうな、という印象だ。
ライバル関係は、技術革新や技術の一般化を促進し、クルマ業界全体を元気にしていく原動力だ。特に、世界のトップレベルの販売台数を誇るトヨタにとって、自分達では気づかなかった点を、ライバル車との戦いから教えられることが数多くあるだろう。
今の強いトヨタはライバルの存在が作り上げたと言ってもいい。今後も、トヨタに対する強いライバルが現れて、日本のクルマ全体を、より良くしていってもらいたい。
コメント
コメントの使い方