■短期でのバスの電動化は国内3ブランドには困難か
ただ、バス車両のオリジナルでの電動化(BEV)については、国内3ブランドでは短いスパンでの市販化はほぼ期待できない状況にある。
ある国内バスメーカー関係者に以前聞いたところ、「雇用問題に発展するので、BEVはアンタッチャブル」といった話を聞いたことがある。部品点数の少ないBEVにすると、取引先でのリストラや取引先自体の廃業を招いてしまうというのである。
現場の運転士レベルなどでは好評のBEVバス。中華系メーカーならば、日系のディーゼルバスと価格はほとんど変わらないとのこと。中国国内での営業運行実績もあるので、路線バスの電動化を進めるには、中華系メーカー車両の導入が早道なのだが、政府レベルでは「安全保障上の問題がある」との声もある。
いまは良好な日中関係であるが、いつこれが崩壊してもおかしくない。その時に「部品供給をとめる」とか言われてしまうのではないかというのである。
中華系以外には、韓国ヒュンダイ自動車もBEVバスに熱心なのだが、“安全保障上”とまではいかなくても、やはり政治レベルでの不安要素がまったくないわけではない。
●東南アジアなどの新興国では欧州メーカーが展開
そのなか、東南アジアなどの新興国で積極的に動いているのが、欧州系メーカーである。ダイムラーやスカニア、ボルボが、いまは内燃機関車となるのだが、バスシャシー販売を積極展開している。
バスシャシーのみを販売し、上屋、つまりボデー架装は地元メーカーに任せるというものである。いまのうちに、各国の市場に食い込んでおき、きたるべき車両電動化もそのまま進めてしまおうとしているのではないかとの話もある。
日系バスメーカー3ブランドも、何らかの形でダイムラーやスカニアなどと提携関係にあるので、いざとなったら外資頼みで車両電動化を進めるのではないかともいわれている。
いま盛んに全国で“連節バス”の導入が進んでいる(HEVとなるが)。連節バスではダイムラーやスカニア車両のほかに、日系ブランド車もラインナップされているが、連節バスで“要”となる技術は外資製となっている。
「これを日の丸連節バスと呼んでいいのか」という声も業界内では聞かれた。“もの作り大国日本”は過去の話。いまはバス以外でも“できない技術”が増え続けているのである。
■タクシー電動化はLPGスタンド減少の救世主?
一方のタクシーでは、燃費の良いJPNタクシーの登場もあるとされているが、東京も例外ではなく、LPガススタンドの廃業が相次いでいる。いまや、地方の県庁所在地であっても、街を走るタクシーはガソリンハイブリッドやガソリン車ばかりとなっている。
LPガススタンドの廃業で、距離の離れたスタンドへ行くことになり効率が悪くなっているだけならまだしも、“LPガススタンド空白地帯”まで生まれているのである。
ただし、地方の山間部などではガソリンスタンドの廃業も目立ってきている。ガソリン車ですら、タクシーの運行が難しくなるエリアが増える日も近いともいわている。
そこで気になるのがBEVタクシーである。試験導入レベルを除けば、世界で本格的にBEVタクシーが導入されているのが中国。それでも、まだまだ内燃機関車が多いのだが、着実にBEVタクシーが増えている。
日本では、かなりの山奥まで電気はしっかり引かれている。タクシー車両の電動化は地方の山間部などから始まるのではないかともいわれている。BEVタクシーではBYDがすでに“e6”というモデルをベースにしたタクシー車両を世界市場でラインナップしている。
e6自体は2009年にデビューした“10年選手”のBEVなので、タクシー車両としてのコストパフォーマンスも高いようである。このほかには、レンジエクステンダー搭載のロンドンタクシーとなるが、こちらはコストパフォーマンスが気になるところ。
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