■アジアの一部でも富裕層を中心に浸透
しかし、クルマの複数保有が当たり前のアメリカでは、BEVは街乗り用で、レジャーなどではガソリン車を利用するといったパターンも多いようだ。
韓国起亜自動車やヒュンダイ自動車などもBEVをラインナップしているが地元のひとは、「街で見かけることはあるけど、レンタカーでしょ」と語ってくれた。“まずは富裕層から普及を”というのが、“アメリカ流”なのかもしれない。
タイのバンコクでも“アメリカ流”で電動車が普及しているとの話を聞いたことがある。
バンコク市内の高級ショッピングモールの駐車場では、店舗への出入り口近くに充電施設が設置されており、そこにおもにPHEVまたはテスラとなるようだが、富裕層がクルマを停めて、充電している間に“お買い物”をするのがトレンドとのことである。
BEVはガソリン車に比べれば割高な価格設定となっているのが現状。人為的な普及促進策の強化をしなければ、富裕層から乗り始めるのは自然な流れ、過去の自動車自体の創成期であっても、富裕層の“道楽”として普及が進みはじめたとされており、時代は繰り返しているのである。
■一気に電動化を進めようと画策する中国
世界一BEVが普及されている中国では、さまざまなインセンティブを用意し、庶民から富裕層まで一気に車両電動化を進めるような政策をとっている。
しかし、中国汽車工業協会によると、2021年2月の中国国内での新車販売台数145万5000台に対し、新エネルギー車(中国では新能源車/PHEV、BEV、FCEV)の販売台数は11万台となり、全体に対する新エネルギー車の販売比率は約7.5%にとどまっている。
しかも、北京や上海、広州など大都市の道路でさえ、走るクルマを見ていると、新エネルギー車は目立つものの、路線バス、タクシー、ライドシェア車、日本でいうところのライトバンといった、“はたらくクルマ”ばかり。
一般仕様では、ポルシェ カイエンや、レンジローバーなど高級外資ブランドのPHEV車やテスラを圧倒的に多く見かける。つまり、世界一新エネルギー車が普及している中国であっても、個人消費者レベルでの電動車普及はけっして“思惑どおり”ではない様子が伝わってくる。
そこで、中国政府はつい先日、バスやタクシーなど、公共輸送機関車の100%新エネルギー車化を推し進めることを発表している。台湾も段階的な電動車普及を進め、最終的には2040年に電動車以外の販売を禁止するとしている。
最近中華ブランドのマイクロBEVが注目されており、そのなかでもあるブランドのマイクロBEVが日本で注目されている。
“世界一売れているBEV”ともされているが、政府の新エネルギー車普及の新たな“切り札”のように見え、報道での現地レポートにおいて、“セカンドカーとして重宝している”というのも、中国におけるBEVの新しい普及スタイルのようにも見える。
●日本では選択肢の少なさが普及のネックに
日本国内では現状でも、BEVやFCEVなどへの購入補助金は用意されているが。電動車の普及は遅々として進んでいない。インセンティブの充実などの前に、明らかに選択肢が少なく、とくに日本車だけで見れば選択肢がかなり限定されているのも普及を阻んでいると考える。
中華ブランドでは当たり前のようにBEVが幅広くラインナップされているのに、中国国内で思うように普及しない様子を見れば、日本の現状は当たり前のようにも見える。
日本では自国ブランドでは、HEVを除けば極端に電動車のラインナップが少ない現状では、ダラダラと自家用車メインで電動化を進めていては、普及のスピードアップは期待できない。
そこで、日本でも路線バスやタクシーから電動化を進めてみてはどうだろうか? と筆者は考える。
すでに全国各地で中国BYD製のBEVバスが営業運行を行っている。BYDのほか複数の中華系ブランドBEVバスも日本に上陸している。
多くのバス事業者では新型コロナウイルス感染拡大により、大幅な収益減に苦しんでおり、燃料としての軽油代の負担が重くのしかかっている。また日々運行しているので、エンジンオイルもその消費量がハンパではない。そのようななかで、バス業界で熱い視線を集めているのがBEVバスとなっている。
軽油に比べて電気代は安いし、内燃機関車のようにオイル交換も不要など、メンテナンスコストの削減もねらえる。すでに、世界の多くの国では、路線バスはCNGなどのガスを燃料として走っていることが多く、先進国でディーゼルバスばかりというのも珍しい。
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