N-BOX大ヒットで変わったホンダ車の功罪 商品開発にも影響絶大!?

■人気車の一極集中が招く国内販売への影響

2020年度の軽自動車販売数ナンバーワンはN-BOXだったが、全車を含めた国内販売総数ではホンダはトヨタ、スズキに次いで3位となった
2020年度の軽自動車販売数ナンバーワンはN-BOXだったが、全車を含めた国内販売総数ではホンダはトヨタ、スズキに次いで3位となった

 このように限られた車種だけが売れ筋になると、ホンダの国内販売総数も伸び悩む。2011年以降は、日産の新型車が減ってホンダの国内販売順位はトヨタに次ぐ2位に高まったが、2020年(2020年度を含む)は、スズキが2位に繰り上がってホンダは3位に下がった。

 さらに月別に見ると、2020年11月以降のホンダは、ダイハツにも抜かれて3位に下がることが増えた。売れ筋が特定の車種に偏ると、それが好調に売れている時は良いが、不調になればメーカー全体の販売実績が悪化する。

 昨今のホンダは、半導体の不足によって減産を強いられ、販売の低迷も本来の人気を反映したものではないという見方が成り立つ。しかし、それにしても販売下落は大きく、N-BOXの好調がそのきっかけになった。

 今の状況は、N-BOXの売り方にも影響を与えている。販売店では以前から「N-BOXはこれ以上売らなくて良いと指示されている」という話が聞かれた。

 2021年の3月決算フェアでも、大半のホンダ車にはカーナビを含めたディーラーオプションのプレゼント、残価設定ローンの低金利などを実施したが、N-BOXは対象外であった。

 販売店では「ステップワゴンやヴェゼルのお客様が、子育てを終えてN-BOXに乗り替えることも多い」という。N-BOXは価格の高いホンダ車の需要を吸収するから、いわば「売れ過ぎると困る」クルマでもある。そこで積極的な販売促進を控えるようになった。

■N-BOXのヒットで国内向けの商品開発にも影響大!?

日本仕様のモデルチェンジが遅れ、ライバル車と比べて古さが目立ったアコード
日本仕様のモデルチェンジが遅れ、ライバル車と比べて古さが目立ったアコード

 そして「軽自動車+フィット+フリード=国内で売られるホンダ車の81%」の状態が続くと、国内向けの商品開発にも影響を与える。今のところホンダの小型/普通車は豊富に用意されるが、シビックセダンは終わった。S660も生産終了が決まっている。

 シャトルも気になる。フィットがフルモデルチェンジしたので、シャトルも刷新されてハイブリッド、安全装備、運転支援機能などを進化させそうだが、販売店では「メーカーからフルモデルチェンジの話は聞いていない」という。

 アコードは日本仕様のフルモデルチェンジが遅れた。北米で新型になった後、約2年半を経過して、日本仕様を刷新させている。その間、日本では海外版に比べて安全装備や衝突安全性能が劣る旧型を売っていた。

 アコードは複数の地域で売られるから、販売台数の多い順にフルモデルチェンジするのは仕方ないが、フルモデルチェンジの周期が約5年で、日本では2年半遅れるのは長すぎる。ホンダは日本のメーカーだから、遅くとも北米の1年後にはフルモデルチェンジすべきだった。

 N-ONEはフルモデルチェンジを行ってエンジンやプラットフォームをN-BOXと同様に刷新したが、ボディパネルは先代型と共通だ。開発者は「N-ONEはN360をモチーフにデザインされ、ボディパネルを変える必要はなかったが、背景には開発コストを抑える目的もあった」という。

 以上のようにN-BOXがヒットした後のホンダでは、ミドルサイズ以上の車種を中心にコスト低減が進み、車種が減ったりフルモデルチェンジの周期が長期化している。

 また、シビックやCR-Vは、国内で一度消滅させた後に販売を再開したが、もともと海外向けの商品だから割高な価格と相まって販売は低調だ。買えるだけマシともいえるが、辛辣にいえば、車種だけ調達して水増ししている状態だ。

 少なくとも、レジェンド、アコード、クラリティ、CR-Vは、機能から価格まで、日本向けの商品ではない。NSXは実質的に買えない状態で、販売会社のホームページからは削除されている。

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