自動運転技術でクルマが真のパートナーになる? 【自律自動運転の未来 第7回】

■自動車に人工知能を載せる最大の目的は

 見方を変え、三種の神器を踏まえたこれからの自動運転技術の開発分野に目を向けます。

 自動運転技術は協調領域と競争領域に分類され開発が進んでいるわけですが、とりわけ人工知能は競争領域として日々進化を続けています。

「人を理解する」。

 これが昨今の人工知能開発における注目すべきテーマです。

 示された情報を蓄積して傾向を割り出す、いわゆるディープラーニングの領域から一歩踏み出し、人の状態や感情を構成する要素から最適解を推論する。

 いわば「人工知能が人を理解する」という新たな段階へと踏み出しています。

 人工知能が人を理解する……、これはすばらしい考え方ですが、当面は状況判断から次のコマンドが絞り込まれ、システムから人へ提案がなされるだけに過ぎません。しかし、近い将来には、システムはまさしくパートナーとなり、以心伝心の間柄が構築できると言われています。

 人工知能(≒自動運転を司るシステム)が人を理解しようと試みる第一段階の目的は、本企画の連載第6回(※3)でお伝えした、先進安全技術や自動運転技術の実用化で掲げた目的と同じです。

すなわち、「事故を減らし、誰もが快適な移動の自由を得ること」の早期実現に向け、車内に身を置く人の理解という開発プロセスが人工知能に加わります。

■ある時は見守り、ある時は助ける

 日産では、人が行なう手動運転時の運転操作を学習し、自動運転時にその操作を“真似る”手法の研究が進んでいます。ドライバーが行なうアクセルやブレーキなどのペダル操作の仕方や、ステアリングの切り込み方や戻し方を、システムが自動走行時のお手本としてトレースするのです。

 これによりドライバー含めた同乗者が、あたかも人が運転操作をしているような環境であると安心感を抱くと言います。その上で、自車センサーや通信技術を活用して得られた交通情報により、自車が危険な状態に近づくと予想される際には、システム主導の自動走行に切り替わり危険を遠ざけます。

 トヨタ/レクサスでは、かねてより「Toyota Teammate」、「Lexus Teammate」として、人とクルマがお互いに見つめ合い、ある時は見守り、ある時は助け合う先進安全技術を各車に実装しています。

 2020年には、先進安全技術の分野でレベル2の中核をなすLKS機能に、人との親和性を高める制御を開発。直線やカーブなど道路状況に左右されない滑らかで信頼度の高い(≒精密な)ステアリングサポート制御を「クラウン」や「MIRAI」、「IS」や「LS」などに採り入れました。

いよいよトヨタが自動運転に本気で乗り込んできた。現時点でトヨタの最先端技術が盛り込まれる市販車は、MIRAIとレクサスLS500h
いよいよトヨタが自動運転に本気で乗り込んできた。現時点でトヨタの最先端技術が盛り込まれる市販車は、MIRAIとレクサスLS500h

 さらにトヨタは、2021年4月8日に高度運転支援技術「Advanced Drive」を搭載した、レクサス「LS500h」、トヨタ「MIRAI」を発表しました。Advanced Driveでは、前方4つの光学式カメラ、ミリ波レーダー、LiDARを使い高速道路や自動車専用道路において、トヨタ初のハンズオフ走行が可能です。詳細は追って試乗レポートでご紹介します。

■ホンダの世界初「レベル3」公道走行可能な市販車発売

 ホンダでは、自動化レベル3技術を含んだ「Honda SENSING Elite」の開発で得られた知見を、この先、レベル2までの先進安全技術群である「Honda SENSING」の改良に活かすと表明しています。本連載でも再三レポートしているように、「レベル3」の運用はシステムからのTOR(運転再開要求)に対し、ドライバーが直ちに応えることが前提条件です。

 これは従来の自動車社会になかった人(ドライバー)と機械(システム)との強い約束事であり、これが守られない場合の責任はドライバーにあります。

 3つのフリー状態による自動走行を冠に、世界初と称されたHonda SENSING Eliteですが、じつはTORによる人と機械の協調運転が一層深められたことにも大きな歴史的意義がありました。

 メルセデス・ベンツではMBUX(Mercedes Benz User Experience)を自動運転技術との対話ツールに活用します。2017年10月、フランクフルトモーターショーの会場にてダイムラーのディーター・ツェッチェCEO(当時)に、「自動運転車両にとって不可欠で重要なHMIな何か?」と筆者が質問したところ、すぐさま氏は「それはボイスコマンド(音声による機械とのやりとり)機能だ」と述べました。

 続けてツェッチェ氏は、「それには条件があり、これまで使われてきたボイスコマンド機能とは違う、人工知能とクラウドを活用した新たなシステムが不可欠になる。また、自動運転の開発が進めば同乗者とのコミュニケーションにもボイスコマンド機能は必要だ」と答えました。

 そうした意味で捉えると、日本市場では現行Aクラス(2018年10月)から搭載が始まったMBUXは、将来の自動運転社会を実現するにあたって重要なHMIであることがわかります。

 実際、ボイスコマンド機能は着実に進化しているようで、先頃試乗した新型Sクラスでは、MBUXとの会話キャッチボールがスムースに、そして階層が深くなってきていることが確認できました。

 将来的にはボイスコマンド機能に、車両の制御機能が織り込まれることが考えられます。私見ですが、手始めにACC機能の車間調整機能や、車線変更をアシストする「アクティブレーンチェンジングアシスト」にボイスコマンド機能を拡張してみるのはどうでしょうか。

次ページは : ■「人」と「機械(クルマ)」が協調すること

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