2020年12月に政府が打ち出した「2050年カーボンニュートラル」政策によって、2030年半ばに向けて新車の電動化を表明したことでどんどん進んでいく。
そんななか、輸入車メーカーが積極的に導入を進めているのが、EVのスポーツカーだ。しかし、スポーツカーという趣味性の強いクルマは、ただエコであればいいというものではない。
EVのスポーツカーは、エンジンを搭載したスポーツカーを愛する人を納得させることができる楽しさがあるのか? それともまだその領域には達していないのか? 国沢光宏氏が斬っていく。
※本稿は2021年2月のものです
文/国沢光宏
写真/TESLA、PORSCHE
初出/ベストカー2021年3月10日号
【画像ギャラリー】ポルシェもEV投入で市場はより活性化!! タイカン写真集
■テスラ「モデル3」ですら、高性能スポーツカー並みのパフォーマンスを発揮可能
あと10年もすればスポーツモデルを含め、主力は電気自動車になっていく。
我が国を見てると「エンジン車は残る!」と言い張っている人も少なからずいるけれど、今後10年しないうちに、価格優位性を電気自動車に奪われ、性能だって燃費規制によりヘロヘロの性能しか出せなくなっていくエンジン車は勝てなくなっていることだろう。今や717万円のテスラ『モデル3』はタイヤとサスペンションの変更だけで筑波を1分2秒台で走り、0〜100km/hも3.3秒です。
本来なら実用セダンであるモデル3の性能は、最高速を除きホンダ『NSX』に並び、日産『GT-R』にすら肉薄するパフォーマンスだ。
あと10年もすれば電池性能が3倍以上になる(価格も3分の1ということ)可能性があり、性能もまだまだ上がっていく。2〜3年で電気自動車はガソリン車と並び、そこから差をつけられるいっぽうになると予想しておく。
走り好きも電気自動車を買わなくちゃならなくなります。となると気になるのが「電気自動車って楽しさを持ってるのか?」だ。
■ポルシェがEVスポーツの覇権奪取を狙って「タイカン」を市場投入したが……
先日、ポルシェ『タイカン』に試乗した。ポルシェが「環境の時代の覇権奪取」を狙い、既存の自動車メーカーとしちゃ最速の電気自動車を作ってきたワケです。
0〜100km/h加速2.8秒と、最強のポルシェと言われる『911GT2 RS』と同タイムだ。凄いね! と思うかもしれないけれど、テスラ『モデルS』は2016年に0〜100km/h加速2.7秒を実現している。当時試乗したが、笑っちゃうくらい速かったことを思い出す。タイカンで全集中スタートしてみたけれど、もはや驚きはない。
そればかりかマイナーチェンジしたモデルSの最速モデルは、0〜100km/h加速2秒だって! 2秒で100km/hに達する加速、イメージできますか? F1の加速より速いです。もちろん自由落下(飛び降りた時の加速)より速い。少なくとも私は体験したことなし! きっと飛行場のように幅の広いコースでしか試す気にならないと思う。純粋に0〜100km/h加速2秒ってヤツを体験してみたい、といったエンジン車じゃ不可能な性能まで出せる!
おっとタイカンだった。テスラより楽しいか、と聞かれたらビミョウ。考えてほしい。クルマの味とか楽しさってエンジンが創り出す。クルマの個性も、エンジンタイプや搭載位置によって出てくると思う。なのに電気自動車ときたら、パワーユニットは「電気モーターのように滑らか」がいいエンジンの代名詞になっている電気モーターそのもの。エンジンより圧倒的に軽いため、どこに搭載しても同じ。重いバッテリーはすべての電気自動車で車体中央に搭載されるため差が出ない。
もちろんポルシェなので、事故起きても発火しても原因についちゃテスラと違い安心感あるけれど、クルマそのものの楽しさで比較したら大差なし。むしろタイカンは、テスラよりカッコ悪い。ハンドリングはいいかもしれないけれど、サーキットでレースしない限りドチラも「使い切れませ〜ん!」。
今後「電気自動車の楽しさを発見する!」という必要があるかもしれません。
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