■凶器以外にも、積んでいてはNGな道具もある
もうひとつ、特定の道具の携帯を規制する特殊開錠用具所持禁止法(正式名は特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律)という法律がある。これは通称ピッキング法とも呼ばれ、建物のドアなどの鍵を開けたり、こじ開けたりする道具についての規制だ。
いわゆるピッキングに必要な専門の道具は携帯が当然NG(錠前師などは当然OK)となるのは理解できるだろうが、それ以外にも指定侵入工具と呼ばれる工具も隠して携帯することが禁じられている。
これは先端部が平らで、その幅が0.5cm以上、柄を含んだ長さが15cm以上であるマイナスドライバーとバールなどが該当する。それに電動ドリルもドリル本体と刃の両方揃った状態では、指定侵入工具と見なされるので気を付けたい。有罪となれば1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金と、なかなか厳しい。
クルマに標準で備わっている車載工具には、そうした規制の対象なるようなモノはないが、クルマの整備に使う工具の中には、特定侵入工具に該当するようなモノがいくつもある。ファンベルトの張りを調整するための長いツールなどバール自体がその代用として一般に使われている工具もある。
クルマの工具というのは、よく使われるハンドツール以外にも、大きな力が必要な作業を助けてくれる特殊で頑丈な工具や、普通の工具では脱着が難しい作業を助けてくれる専用工具などもあり、それらはクルマを自分で整備しないヒトから見れば、凶器だと勘違いされてしまうケースも有り得る。
こうしたクルマを整備するための工具でも正当な理由なくクルマに積んでおくと、検問時などに発見されると厄介なことになりかねない。月極駐車場などでDIYメンテナンスを楽しんでいるユーザーの中には、整備の工具をクルマに積み込んで保管しているようなヒトは、車上荒らしや部品泥棒などの誤解を受けないように気を付けよう。
また、これまで挙げた凶器や特定侵入工具のようなモノでも殺傷能力があると判断されるモノをクルマに積んでいて、2名以上で乗車していたり、2台以上のクルマで集合していれば、凶器準備集合罪に問われる可能性も出てくる。これは2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる。
■積んでいれば即逮捕ではなく、火のないところに……の論理
厳密に言えば法律違反となる行為と犯罪の境界は、かなり微妙だ。というのもこうした法律自体、所持を禁止するものではなく隠して携帯することを禁止している。すなわち、犯罪を未然に防ぐ目的で定められているものであり、怪しい人物が凶器や工具を持っていた場合、この法律を根拠に取り調べなどができるようにするためのものだと考えていい。
したがって正当な理由があれば、持ち歩いても罪には問われない。けれども、客観的に見てもその正当な理由というのが明らかであれば問題ないものの、正当な理由があっても証明することが難しい場合も多い。例えば出張サービスや支店を移動する料理人の包丁や美容師のハサミといったように職業上持ち歩くことが当然と思われる場合や、購入したばかりでレシートや領収書を持っていれば、持ち帰る最中だということは証明できる。
しかし、料理が得意で知人宅で料理を振る舞った際の道中(この場合、携帯するのは包丁だけではないなら、問題なさそうだが)だったり、元美容師で友人の髪を切ってあげるためにハサミを持って移動していたなどの場合は、証明するのが難しいだろう。
筆者もオートキャンプを家族で楽しんでいた頃には、クルマの中にアーミーナイフを常備していた。これは車中で何かする時にも案外役立つので、キャンプに行かない時にも積みっ放しにしていた。こういうヒトは多いだろうが、別に隠して携帯していた訳ではないので、それ自体で罪に問われることはないだろう。
そもそも怪しげな行動を取らなければ、クルマを停止させられたり、職務質問を受けることもないハズ。そうならなければ、何を積んでいても罪に問われることはないのだから、行動にこそ気を付けるべきなのだ。
そして重く頑丈な道具を積んでいると、高速道路での交通事故や転落事故などの際に、道具が車内で暴れたために重傷となる可能性もある。そうした道具は積んだまま走らないほうが、色んな意味で安全なのだ。
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