トヨタの全車種併売化からまもなく1年! 新車販売改革によってユーザーのメリットは増えた? 減った?

■併売化により、売れ筋にも変化が。一番恩恵を受けたのは、あのミニバン

 専売車種の併売化による成功例では、アルファードの現状における“爆売れ”状況は語らずにはいられないだろう。

 アルファードはトヨペット店の専売だったものが併売化されている。兄弟車のヴェルファイアもネッツ店の専売から併売化されているが、それ以前からすでに販売台数が低迷しており、4月末に実施予定の改良では単一グレードとなるようだ。

 実は これには2020年夏頃から、「アルファードを積極的に売るように」と、販売現場には指示があったことが影響している。現場のセールスマンも「特にこだわるお客様以外はヴェルファイアを売らない」とのことであった。

 また、併売化でアルファードの販売増に貢献したのは、トヨタ店とカローラ店といえるだろう。

月販1万台以上と絶好調のアルファード。併売化の恩恵を最も受けたクルマといえる。ディーラーとしても、顧客に売れ筋のクルマを勧めやすくなったと手応えを感じているようだ
月販1万台以上と絶好調のアルファード。併売化の恩恵を最も受けたクルマといえる。ディーラーとしても、顧客に売れ筋のクルマを勧めやすくなったと手応えを感じているようだ

 トヨタ店では併売前から、クラウンユーザーには「アルファードが欲しい」という声が多かったとのこと。しかし、アルファードはトヨペット店の専売だったので、トヨタ店にエスティマがラインナップされていた頃はエスティマを勧めたり、なんとか説得してクラウンを乗り継いでもらったりしていたようだ。

 エスティマよりもアルファードのような豪華なテイストが好きで、孫と親子三代でドライブに行きたいとか、多くの仲間と一緒にゴルフに行きたいなどという、富裕層の“アクティブシニア”がアルファードに興味を示していたようだ。

 そして、2020年5月以降はトヨタ店でもアルファードを扱うようになり、クラウンからアルファードへ乗り換えるユーザーが増えたことが、いまのクラウン販売苦戦傾向の影響のひとつと考えられる。

 カローラ店ではエスティマユーザーのなかから、「アルファードに乗り換えたい」というオファーが目立ったとのこと。オファーの有無に限らずエスティマユーザーへアルファードへの乗り換えを勧めていったようだ。

 また、アルファードはリセールバリューがいい。そのため残価を高く設定できるので、残価設定ローンを組むとノア/ヴォクシーの月々の支払い額に数千円足すだけでアルファードに乗れるため、現在もアルファードへの乗り換えを積極的に進めているようである。

カローラも併売後「売りやすい」とディーラー各社で歓迎されている。グローバル化されたとはいえ、車幅やホイールベースを「日本仕様」をしたことが功を奏したようだ
カローラも併売後「売りやすい」とディーラー各社で歓迎されている。グローバル化されたとはいえ、車幅やホイールベースを「日本仕様」をしたことが功を奏したようだ

 また、アルファードほど派手な動きはないものの、カローラシリーズの併売化もカローラ店以外のチャンネルからは歓迎された。

 3ナンバー化したことで、マークIIやマークXなどからの乗り換え促進ができるし、現行型プリウスのエッジのきいたデザインへの反応がよくない先代型プリウスユーザーにもカローラセダンのハイブリッド車を勧めやすいとのことであった。

 カローラツーリングはトヨタブランドでは事実上オンリーワンのステーションワゴンであるうえ、販売台数は限られるものの貨客兼用する法人需要までカバーできるので歓迎された。

 ただ、クラウンについてはトヨタ車のなかでも特別なモデルなので、新たに扱い始めたチャンネルでは、なかなか扱いにくいとの声も多い。

■市場規模の縮小で、各メーカーは販社の統廃合と併売化を進めざるを得なかった

 バブル経済の頃は、新車市場がいまの倍の規模で、しかも右肩上がりで市場拡大が続いた。車種数を増やせば増やすほど、新車が売れるというのも言い過ぎではないほど、とにかく新車が売れた。

 その当時はトヨタ以外でも、日産やホンダもチャンネルごとに専売車を設けていたりしたが、その後日産はチャンネル(日産店、プリンス店、サティオ店)を維持しながら全車併売化した。

 ホンダもプリモ、ベルノ、クリオと3チャンネルあったものをホンダカーズに統合し、全車併売化を実施している。

 全車併売化は市場規模の縮小に合わせたラインナップの統廃合を進めるという意味も大きい。また、バブルの頃に比べれば消費者のクルマに対する興味も薄れ、「同じトヨタの店に行っても、欲しいクルマが売っていない」などと、専売車が販売活動にネガティブに働くようになったことも影響しているようだ。

 トヨタは全車併売化にあたり、積極的な車種の統廃合や店舗の統廃合を行わず、そのまま全車併売化だけを行っている。そのため、ノア/ヴォクシー/エスクァイア(3兄弟)が同じ店で販売されていたりする。

 車種の統廃合については、改良やモデルチェンジのタイミングで進められていくようで、ノア3兄弟はすでにヴォクシーが単一グレード扱いとなっており、年末ともいわれるフルモデルチェンジでは、エスクァイアが廃止される見込みとのことである。

ノア3兄弟も次のモデルチェンジで、一気にノアへ統合されるとの情報だ。もともと各販売店用に兄弟車を増やした経緯もあり、併売による統合は自然な流れだろう(写真は編集部による予想CG)
ノア3兄弟も次のモデルチェンジで、一気にノアへ統合されるとの情報だ。もともと各販売店用に兄弟車を増やした経緯もあり、併売による統合は自然な流れだろう(写真は編集部による予想CG)

 モデルの廃止も進んでいるので、モデルの統廃合は順調に進んでいるといっていいだろう。

 店舗の統廃合については、全国のトヨタ系ディーラーは各地元の有力企業や“名士”がオーナーとなり、原則トヨタとは資本関係のない“地場資本ディーラー”がほとんどであるため、難航するのではないかともいわれていた。

 しかし、すでに地域によっては、トヨタの直営ディーラーの地場資本ディーラーへの譲渡などが行われており、東京都内では直営販社を統合し、“トヨタモビリティ東京”としている。

 東京以外でも、神奈川トヨタ、トヨタカローラ横浜、ネッツトヨタ横浜、ネッツトヨタ湘南が合併して「トヨタモビリティ神奈川」に屋号を統一したり、「トヨタモビリティ富山(富山トヨタ、富山トヨペット、ネッツトヨタノヴェルが合併)」などが設立されており、全国的に見れば販社統合も進められている。

 今後は“トヨタモビリティ”化が実施されたあとに店舗の統廃合による集約化が本格化していくことになるだろう。

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