走りはセルシオよりも上だった!!? 秀作 日産 インフィニティQ45が陥った轍【偉大な生産終了車】

■現在にも通じる「ジャパン・オリジナル」という轍

「ジャパン・オリジナル」を標榜し、そしてスポーティで優秀な走行性能も有していた日産 インフィニティQ45が、日本では人気薄なまま1代限りで終わってしまった理由。

 それは、「ジャパン・オリジナル」なるものの定義に失敗したから――であるように思えます。

 ジャパン・オリジナルとは、平たく言い換えるなら「日本ならではの良さ」といった感じになるでしょうか。

 では、「日本ならではの良さ」とはいったい何でしょう?

 なかなか難しい問題であり、浅学非才な筆者が簡単に「こう!」と言える話でもありません。

 しかし少なくとも、「フロントに七宝焼のエンブレムをくっつけて、インパネを漆塗りにするのが日本の美である」とは、絶対に言えないはずです。

マイナーチェンジ後のQ45。フロントにグリルが取り付けられ、それまでのイメージは鳴りを潜めた
マイナーチェンジ後のQ45。フロントにグリルが取り付けられ、それまでのイメージは鳴りを潜めた

 マンガ『美味しんぼ』のなかで主人公の山岡士郎と、その父である海原雄山が「日本の良さを料理に生かす」的なテーマで勝負を行うことになった際、士郎は「最高のアワビやイクラなど」をふんだんに使うことを考え、それは実際、審査員も「うまい!」と唸るほど美味しいものになりました。

 しかしそれに対して雄山は――ググらずに記憶で書いているため、細部は少し間違っているかもしれませんが――最高のトマトを使い、きわめてシンプルなスパゲティを作りました。

 そのシンプルな、というか貧相なビジュアルのトマトスパゲティを見て、士郎は「ふっ、俺の勝ちだな」と確信しましたが、審査員が全員一致で「これこそが日本の良さを体現した素晴らしい料理である!」と判定したのは、雄山が作ったシンプルな、しかし素材の良さをそのまま引き出したスパゲティのほうでした。

 本稿はマンガのあれこれを語るものではないためこれ以上の詳細は省きますが、「ジャパン・オリジナル」とは七宝焼や漆塗りそのものではなく、雄山が提示した「精神のあり方」であるはずです。その点でまず、インフィニティQ45はズレていました。

 そしてズレていたといえば、「メルセデスやBMWなどにも負けない高速域でのスポーティなドライブフィール」というのも、ジャパン・オリジナルの観点から言えばズレていたのかもしれません。

 欧州列強の高級サルーンにも負けない高速域でのフィールと安定性を生み出すこと自体は、もちろん素晴らしいことであると思います。

 しかし向こうは、場合によっては200km/h以上での巡航を行うためのクルマであり、そのための作りをしています。

 それと同等の安定感をもって走れる車を、公的には(当時)100km/hまでしか出すことができず、イリーガルな場合でもせいぜい130km/hぐらいまでしか出せない日本で走らせても、実はあまり気持ち良くはないものです。

 100km/hぐらいまでの範囲、つまり日本国内での使用を前提に考えるのであれば、コアな自動車マニアからは忌み嫌われることも多い、先代までのトヨタ クラウンの「きわめて乗り心地が良く、きわめて静粛である」というあの世界観のほうが、よっぽど「素晴らしきジャパン・オリジナル」だと言えるでしょう。

 欧米列強に食い込まんとし、同時期に発売された初代トヨタ セルシオに負けまいとした日産 インフィニティQ45の、気概そのものは立派でした。

 しかしその実際のアプローチは、少々微妙だったと言わざるを得ません。

■日産 インフィニティQ45 主要諸元
・全長×全幅×全高:5090mm×1825mm×1425mm
・ホイールベース:2880mm
・車重:1840kg
・エンジン:V型8気筒DOHC、4494cc
・最高出力:280ps/6000rpm
・最大トルク:40.8kgm/4000rpm
・燃費:5.5km/L(10モード)
・価格:634万円(1990年式 油圧アクティブサスペンション装着車 セレクションパッケージ)

【画像ギャラリー】海外ではインフィニティブランドのフラッグシップモデルに成長! 日産 インフィニティQ45をギャラリーで見る

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