充電渋滞? 大停電? 電気自動車が普及したら訪れる危機とは

■充電渋滞が発生する?

 もう一つのインフラ問題として電気自動車で一定距離以上のドライブに出かけるのに必ず必要となる急速充電器の台数が十分なのかという問題が挙げられる。行楽シーズンに遠出するとなると使うのは高速道路。

 例えば都内から伊勢神宮まで450㎞の道のりを東名・新東名・伊勢湾岸・東名阪・伊勢道経由で電気自動車で行き、200㎞ごとにサービスエリア・パーキングエリアで急速充電器を使うとする。

 すると新東名の静岡SAと東名阪の御在所SAで給電することになるが、どちらも1基しか急速充電器がない。複数の急速充電器があるのはNEXCO中日本管内では東名海老名SA(上り下りとも3基)と足柄SA(同2基)、新東名岡崎SA(同2基)だけで他はどこもすべて1基のみ。

東名下り海老名SAに直近増設された急速充電器、これで3台同時に充電できるようになった、著者撮影
東名下り海老名SAに直近増設された急速充電器、これで3台同時に充電できるようになった、著者撮影

 高速道路SAのEV充電スポットに1基しか急速充電器がないというのは行楽シーズンにはあまりにも心細い。一回の急速充電は最長30分なので、自分の前に2台待っていたら自分が充電終わるまでに最長2時間。

 食事していて充電終わったのに戻ってこないドライバーもいるかもしれないからもっと時間がかかる可能性も。かといって途中で高速を降りて充電するかというと…。それもドライバー心理としてはちょっと違う気がする。

 電気自動車充電スタンド情報サイトGoGoEVによると、充電スタンドの利用のピークは18時から19時。20時を過ぎると大幅に利用率が下がる。やはり多くの人が同じタイミングすなわち食事をしている間に急速充電しているのかもしれず、電気自動車が普及するにつれ充電渋滞ができる可能性がより高まることが予想される。

充電スタンドの利用は出勤前の6~19時に集中、多くの人が同じタイミングで給電を行っていることが分かる。ピークとボトムで10倍以上のギャップが存在(出典:GoGoEV)
充電スタンドの利用は出勤前の6~19時に集中、多くの人が同じタイミングで給電を行っていることが分かる。ピークとボトムで10倍以上のギャップが存在(出典:GoGoEV)

■海老名SA下りで実際のユーザーの声を聞いてみた

海老名SAで急速充電する2台のリーフ、3台分の充電器とその後ろに3台分の充電待ちスペースがあるが4台以上充電待ちのクルマが出るとサービスエリア入り口通路にはみ出てSA流入速度が下がってしまい本線に渋滞が発生する原因となる、著者撮影
海老名SAで急速充電する2台のリーフ、3台分の充電器とその後ろに3台分の充電待ちスペースがあるが4台以上充電待ちのクルマが出るとサービスエリア入り口通路にはみ出てSA流入速度が下がってしまい本線に渋滞が発生する原因となる、著者撮影

 実際に平日木曜日の午後4時ごろ、東名高速道路下り海老名サービスエリアのEV充電スポットにて、リーフのオーナー2組にお話を伺った。

 まず一組目は浜松ナンバーのリーフに乗られた60代のご夫婦。一戸建てのご自宅に200Vの充電器をお持ちだそうだ。エコであること、加速の良さ、静かで乗り心地がいいことからとても気に入られ、航続距離が伸びた新型リーフが出たタイミングで2台目のリーフに買い替えられたという。

 急速充電器でフル充電しても400㎞の容量に対し実際の高速走行では時速100㎞を超えると電費が悪化するため200㎞程度の走行距離で給電が必要となるので、浜松に帰るのには新東名静岡SAでまた充電する必要があるとのこと。

 電気自動車の普及が電力不足を引き起こす可能性についてはあまり意識されたことはなく、充電渋滞も経験があるが行楽シーズンに遠出をするときはご子息が乗られているガソリン車を借りる、通常の利用については奥さまが自宅から10㎞圏内の通勤で使われることがほとんどで、それだけであれば何の問題もなくとても満足しているとおっしゃっていた。さすが2台目にも同じクルマを買われただけのことはあった。

 もう一組は50代と30代の男性の二人連れ。川崎ナンバーのピカピカの新車のリーフ。お二人ともスーツ姿だったので営業車かと思ったら自家用車とのこと。集合住宅にお住まいでそこには充電施設はなく、管理組合などにも設置のお願いはしていないとのこと。

 ディーラーの急速充電器をメインに使っていて、近場の運転が多くいつも充電するスポットが使用中でも近くにいくつか別の充電スポットがあるためそちらに移動するので充電渋滞は経験されたことがないとおっしゃっていた。

 電気自動車の普及が電力不足を引き起こす可能性には「それはあまり現実出来ではないのでは?」とのお考えをお持ちで、エコでスムース、点数をつけるとしたら100点満点で使い勝手も含めて超満足していると力強くおっしゃっていた。

 2組の方のお話を聞いて感じたのが、現在の普及台数が維持されているがゆえにインフラの問題が強くされていないのでは、ということ。

 これから政府が電動車の比率をある意味かなり強引に増やしていく積極的な措置を取らないと、世界に公約として掲げた2035年での電動車販売比率100%、2050年カーボンニュートラル達成は困難だが、それまでの道のりにおいて電気自動車ユーザーはこれからかなりの「成長痛」を味わう可能性がある。

 新規ユーザーを増やし数値目標を機械的に達成するだけではなく、電気自動車その他の次世代自動車を購入してカーボンニュートラル達成を従前から自腹で応援している既存のユーザーの利便性や満足度向上も十分考慮に入れたうえでの目標達成をお願いしたい。

【画像ギャラリー】まだまだ少ない主な国産電気自動車を写真でチェック!

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