■映画のカーアクションさながらのTV-CFはインパクト大
クルマがダンスを踊るように走る。アイデアは素晴らしいが、実現可能なのかどうかという疑問がスタッフに残った。しかしそれを簡単に払拭したのが、フランスに本拠を持つ、レミー・ジュリアン アクションチームだった。
映画「007」シリーズでカーアクションを担当するこのチームの存在なくして、このTV-CFの成功はありえなかった。
黄色と赤のジェミニが2台揃ってスピンターンをしながら走る作品やこの2台がエッフェル塔前をジャンプしている作品。名曲「雨に歌えば」をバックに黄色と緑のジェミニがスピンしながら走行する作品。青と黄色のジャミニ4台がパリの街を駆け抜けて最後ジャックナイフでポーズを決める作品。
極めつけは1986年の正月にオンエアされたジェミニダンスシングシリーズ。あけましておめでとうございます。の文字をバックに赤と黄色のジェミニが片輪走行を行う作品や赤と白のジェミニがパリのメトロの駅を走行し、出入口から出てくる作品などもある。
文字にするだけでもワクワクしてくるが、シリーズ化されているのが特徴だ。ちなみにこのTV-CFはYouTubeで検索すれば今でも見られるので探して、1度は見てもらいたい。
そんなTV-CFでインパクトを与えたいすゞジェミニだが、この1985年に登場したジェミニは2代目モデルとなる。1971年にいすゞはGM(ゼネラルモーターズ)と提携を行い、このパートナーシップによる初のワールドカー構想(Tカーシリーズ)の乗用小型車として1974年に初代ジェミニは登場した。
■オペル カデットをベースに開発された初代ジェミニ
名称のジェミニは双子座の意味で、GMとの共同開発にちなんで命名されている。ベレットの後継車として登場した初代ジェミニは、オペル カデットをベースに開発されたFR車の小型の2ドアクーペと4ドアセダン。
搭載されているエンジンは、当初は1.6L直列4気筒ガソリンのみだったが、後に1.8Lガソリンエンジンを追加。
そして、小型ディーゼルエンジンの先駆者として知られているいすゞらしく、1979年11月に1.8L直列4気筒ディーゼルエンジンを搭載。最高出力61ps、60km/h定地走行値29km/Lという低燃費を実現し、ジェミニはディーゼル乗用車の代名詞となった。
また、このディーゼルエンジン登場に先立って6月にマイナーチェンジを実施。内外装のデザインを大幅に変更し、フロントマスクは逆スラントマスクから、スラントノーズへと変更。ヘッドライトも角目2灯へと変更された。
そして同年11月には1.8L直列4気筒ディーゼルエンジンそして、1.8L直列4気筒DOHCエンジンを搭載したZZを追加。このZZはラリーに参戦するなどジェミニのスポーツモデルとして人気を博した。初代ジェミニは2代目のFFジェミニが登場した後も併売され、1988年に生産終了している。
■17年ぶりのオリジナル設計で2代目ジェミニはFFに
2代目のFFジェミニはその名前の通り、駆動方式をFRからFFに変更し、117クーペ以来、17年ぶりのオリジナル設計のモデルとなっている。ボディサイズやエンジンを小型化しているが、駆動方式の変更により居住性と取り回しの良さを実現した。ボディタイプは4ドアセダンと3ドアハッチバックへと変更されている。
搭載されているエンジンは、1.5L直列4気筒ガソリンをはじめ、1.5L直列4気筒ディーゼルエンジン。1.5L直列4気筒ターボ、1.6L直列4気筒DOHCなどを追加した。また、トランスミッションは1986年にコンピューター制御の5速AT「NAVi5」を搭載するなど注目された。
1987年のマイナーチェンジでフロントマスクを大きく変更。つり目と呼ばれるフォグランプ一体型のヘッドランプを採用。フロントグリルのデザインも変更されている。そして、この時にFFという冠が取れてジェミニと改名した。
2代目ジェミニはドイツのチューニングブランドである「イルムシャー」やイギリスのスポーツカーメーカー「ロータス」が手がけた「ZZハンドリング・バイ・ロータス」をラインアップするなど走りに磨きを掛けたモデルも用意されていた。
そして1989年に2度目のマイナーチェンジを行い、外観が変更された。モデルラインナップも豊富で、イルムシャーやZZハンドリング・バイ・ロータスといったスポーティモデルをはじめ、キャンバストップを採用するC/Cユーロルーフなど個性的なグレードを用意していた。
そして1990年3月にフルモデルチェンジを行い、3代目ジェミニへとスイッチした。1992年10月期決算においても再び大幅な経常赤字を記録したことによって、資金回収の目処が立たない乗用車生産から撤退し、ジェミニの自社生産も1993年7月限りで終了となった。
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