輸出不振で“日本の高級車”に成長した2代目
2008年5月、当時は対アメリカ・ヨーロッパへの輸出が減少していた時期である。輸出不調が要因か、アルファードは日本国内に軸足を置いたモデルチェンジをおこなう。親しみやすい上級ミニバンから、日本の高級車へと変わる瞬間だ。
トヨペット店専売を決め、3.5Lエンジンのグレードを豊富に展開した。希少性を高め、高級車アルファードのイメージを強める。パワートレインには引き続き、3.5Lと2.4Lの2種類を用意するが、3.5Lをメインに据え、高級ミニバンの色を強く出してきた。
対してネッツ店に投入したヴェルファイアでは、初代アルファードが作り上げた上級ミニバンの色を強めた。若者世代への訴求と、2.4Lエンジンの親しみやすさを武器に、ヴェルファイアは販売を拡大していく。
これにより、ターゲット層の広いヴェルファイアの方がよく売れ、よりアルファードの高級感や希少性が高まる結果となった。2代目は、しっかりとしたブランドづくりをおこない、アルファードは成長を続ける。
レクサスオーナーからも厚い支持受けるアルファード
総仕上げとなる3代目(=現行型)は、2015年にデビューする。最上級グレードにはエグゼクティブラウンジを設定し、VIPの移動車としても多く利用されるようになった。
アベノミクスで経済にテコ入れがおこなわれた日本では、景気回復基調が強まる。安くて良いものが求められつつも、同時に高くてもっと良いものを、消費者が探すようになっていく。
筆者は、トヨタ店系列のレクサス店に在籍していた。3代目アルファードの登場と同時に、レクサスオーナーから「アルファードが欲しい」という声を、多く聞くようになる。
グループ内にネッツ店があり、ヴェルファイアなら紹介できるという話をするものの、多くのオーナーはヴェルファイアでは納得せず、アルファードを指名し続けた。
レクサスオーナーからも厚い支持を受けるほど、高級車としての地位を確立したアルファード。兄弟車であるヴェルファイアに対しても、高級感で優位に立ち、2020年5月、トヨタ全チャネル併売開始と共に、人気をうなぎ上りに加速させていく。
これまで、取り扱いのなかったトヨタ・カローラ・ネッツ店で、アルファードを購入できるようになり、チャネル制度に縛られていた消費者を、一気に囲い込んだ。アルファードは、いつかは乗りたい高級車にまで上り詰めたのだ。
エルグランドが高級路線を「押して」いた時代に、アルファードは「引く」ことでファンを増やした。ファンが充分集まったら、希少性と権威性を高める。そして、的確なセルフブランディングを進めていき、ファンの満足度を高めていく見事なステップを踏んでいる。
この3段階のステップは、人気YouTuberやインスタグラマー、ベンチャー企業などの成功例と同じ流れである。現代社会を読み解いた、戦略の勝利ともいえる。
クルマのブランド化は難しく、長い年月がかかることが多いが、アルファードは20年足らずで自身をブランド化させた。地道に積み上げたユーザーの支持は、今後もアルファードの人気を加速させていくだろう。
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