ホンダの販売が好調だ。といってもこれはクルマではなく、航空機事業子会社のホンダ エアクラフト カンパニーが手掛ける「ホンダジェット」の話だ。
ホンダは、小型ジェット機カテゴリーにおいて4年連続で世界第1位のデリバリー数を達成したことを発表した。
カテゴリートップをいかにして実現したのかをレポートする。
文/永井隆、写真/Honda、Mitsubishi Heavy Industries
【画像ギャラリー】ひらいた翼 天に飛ぶ!! 4年連続カテゴリートップのホンダジェットとぶ
■空も陸も「小型」が強い!? ホンダジェットの販売好調
ホンダのビジネスジェット、ホンダジェットの販売が好調だ。コロナ禍の影響を受けながらも、2020年のデリバーリー数は31機を数え、小型ジェット機のカテゴリーで4年連続して世界1位となった。
ホンダジェットは、最大定員が8人(乗員1人なら乗客7人。同2人なら同6人)。価格は20年度で530万ドル(1ドル109円として5億7770万円)。ホンダの航空機事業子会社であるホンダ・エアクラフト・カンパニー(本社は米国ノースカロライナ州)が、事業を担っている。
2016年12月に米国連邦航空局(FAA)より型式証明を取得して引き渡しを開始。北米を中心に、欧州や中南米、東南アジア、中国、中東、インド、そして日本で販売されていて、累計で170機以上が運用されている。さらに、20年にはロシアとパキスタンで型式認証を取得した。
新型コロナウイルス感染拡大から、ビジネスジェット市場は大きく縮小した。ホンダジェットの場合、19年のデリバリー数は36機。「20年上半期にはコロナ禍の影響を受けた。しかし、20年後半からは回復できた」とホンダ。
■ホンダジェットは「空のフィット」!! 快適性と燃費を重視しつつ操縦性能も高い
ではなぜ、ホンダジェットはビジネスジェットのなかで4年連続して首位になれたのか。やはり、自動車メーカーであるホンダのブランド力が、特に中心マーケットである北米で生かされているためなのか。
「とんでもない。そんな甘くはない。自動車とはまるで違うビジネスであり、むしろ自動車のホンダブランドはマイナスにも作用する。価格も、カテゴリーのなかでは安くはない」とホンダ。
北米ならば、中小企業のオーナー経営者がユーザーに多いそうだ。米国の場合、国土が広い上すぐに使用できるローカル空港が多い。
このため、ビジネスジェットはビジネスシーンで多く使われる。会社から最寄りの空港までは車を走らせ、空港から目的地の近くの空港へとビジネスジェットで”ひとっ飛び”に向かう。商談を終えると、逆の経路で帰り、夜は家族と自宅で過ごす……。
こうした使われ方の中で、「エンジンが胴体ではなく主翼上面に配置されているため、静粛性に優れ、振動は少ない。何より、機内スペースは広く、トイレもしっかり確保されている。燃費性能が高く環境と財布に優しい」(ホンダ)と話す。
このほかにも、一体型複合胴体を採用し、クラス最高水準の最高速度、最大運用高度、上昇性能などを実現しているのも、連続1位の理由だろう。
航空機に詳しい事情通は、「ビジネスジェットのなかでは、ソニーが社用機にも使っている仏ダッソーファルコンをベンツEクラスだとすると、ホンダジェットはフィットだろう。豪華さはないが、操縦しやすくて、キビキビと飛行し、経済性は高いから」と指摘する。
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