ベストカーでは過去に何度かホンダS2000後継車のスクープ情報をお伝えしてきた。
ところが、今年4月23日にホンダは2040年までに販売する新車をすべて電気自動車(EV)または燃料電池車(FCV)にすることを表明した。すると、刺激的な2Lエンジンを持つ新型S2000はもうこの先出てくることはないのか……。
しかし、新型S2000の計画はかつてホンダ社内で確かに存在していたのだ。その計画はいつ頃にどのような内容だったのか?
当時の新型S2000スクープ情報の舞台裏を振り返るとともに、ホンダスポーツのこれからを考察していく。
文/宇井弘明 写真/HONDA、ベストカー編集部
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■2040年以降ガソリン車を売らない方針でS2000後継車は?
4月23日、ホンダの三部敏宏社長が発表した、ホンダは2040年以降EVとFCV車のみの販売とし、ガソリン車は売らないという目標宣言は衝撃的だった。前日の22日にトヨタの豊田章男社長が明らかにした水素エンジンによるモータースポーツへの参戦とは、ある意味で真逆の動きでもあった。
今回の発表はいずれも以前からスケジューリングされていたもので、トヨタの発表に対して、ホンダがおこなったものではないにせよ、今後の自動車界の動きを2分する大きな動きとして注目される。
そうなると、これまでホンダが築いてきたスポーツモデルはどうなっていくのかがクルマファンとしては気になるところだ。
S660は生産が中止され、NSXも今後の展開が注目され、さらにこれまで伝えられてきたS2000の後継車はいったいどうなるのか?
■2015年に報道された「S2000復活」の噂とスクープの舞台裏
あれから6年が経とうとしている。
「あれ」というのは2015年にスクープしたホンダS2000の後継車のことだ。ドイツの特許庁周辺から流出したと言われたCADによるデザイン画像が通信社により世界に配信され、ベストカースクープ班も当然レポートした。
当時、ホンダ内部の情報として、NSXよりも小さなスポーツモデルを計画していて、駆動方式についてはFRのほか、FFやミドシップ説などあらゆるものがあった。
そうしたなか、ひとつの有力な情報として、シビックタイプRのエンジンをミドに積み、プラットフォームはFFのCR –Zのものをミドシップ用に改良して使うというものがちょうど入ってきた時期でもあり、総合して「S2000後継車はミドシップ、エンジンは直4、2Lターボ、最高出力は410PS」として紹介している。
その後、このS2000の後継車情報はぱったりなくなり、2017年、このデザインデータの「ホンダのミドシップ」はゲーム、グランツーリスモ用のVISION GRANTURISMOとして世の中に登場。流出したデザイン画の真相が明らかになった。
しかし、ホンダのミドルサイズスポーツ、S2000の後継車の動きは2008年のリーマンショック前までは確かにあった。リーマンショック直前、ホンダは NSX後継車を完成、市販を目前に控えていた。
2007年1月の北米デトロイトショーで「アキュラ アドバンスト スポーツカー コンセプト」として登場した5L V10エンジンで550ps(スペックは未公表)を誇る高級FRスポーツがNSXの正式な後継車だった。
テスト車はS2000のシャシーを改造し、FRの走行性能を仕上げていったが、ホンダはS2000で得たFR技術をこのNSX、さらにV10のFRサルーンまで生かそうとしていた。
当然、1995年東京モーターショーでホンダ「SSM」としてデザインが公開され1998年、S2000として誕生したこのFRスポーツも次世代モデルが計画されていたのは間違いないところだ。つまり、リーマンショック前までは、現在とは違うFRのNSX、最高級FRサルーン、そしてFRのS2000の後継車という3種のFRモデルが計画されたはず。
リーマンショック後、経営環境も回復し、2012年デトロイトショーで新たに動き出した計画により生まれたミドシップの「NSXコンセプト」を公開、2017年から市販された現行NSX、その前の2013年の東京モーターショーで公開された「S660コンセプト」、2015年に市販されたS660が、近年のホンダのスポーツモデルという位置付けにある。
そのS660も生産中止となり、頂点に立つNSXも将来が決して明るいとは言えなくなった。特にこのままでは2040年には少なくともハイブリッドを使ったガソリンエンジンのモデルもなくなることになる。
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