通常、使用限界がきたらタイヤは4本とも全部まとめて交換したほうがいいもの。
しかし、駆動輪の2本がすごく減ってしまったとか、使用限界まで半分とか中途半端なタイミングで釘を踏んでパンクしてしまったとか、何かしらイレギュラーな状況でタイヤ交換の必要が起こり、「4本とも交換するのはもったいないなぁ」なんてケースも意外とあるもの。
こんな場合、2本だけとか1本だけ交換するというのはOKなのか?
特に最近はタイヤの大きいSUVや、ベーシッククラスでも扁平率が低くてホイールサイズの大きい車種が多く、こういったクルマのタイヤは価格が高いということもあって、できれば費用を抑えたいという人も少なくないはず。
それでもタイヤは4本全部を交換したほうがいいのか? 2本交換にはどんな弊害があるのか? タイヤメーカーへの取材経験も豊富なモータージャーナリストの斎藤 聡氏が解説します。
文/斎藤 聡 写真/standret@AdobeStock、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】クルマの駆動方式に応じたタイヤの摩耗特性を知る
■FF車やFR車は駆動輪が大きく摩耗する
タイヤ2本交換は、ありのケースとなしのケースがあります。つまりケース・バイ・ケースです。
性能を厳密に考えるなら4本同時交換がベストかもしれませんが、乗用車のほとんど95%はそれほどシビアに作られていません。また、ECOのことを考えると、まだ使えるタイヤを廃棄するのは、あまり好ましくありません。
クルマの駆動方式を考えた時、FF車は前輪に駆動力がかかるため、後輪に比べて前輪の摩耗が激しくなります。FR車の場合は後輪が摩耗しやすい傾向にあります。また、前輪は操舵輪なので、タイヤの外側が摩耗しやすくなります。
ですからタイヤのローテーションをしないと案外「前輪だけ」、とか「後輪だけ」が摩耗してしまっているなんてことが起こります。
スタッドレスタイヤを持っていて、冬にタイヤを履き替えるなら、そのタイミングで前後のタイヤを入れ替えれば、前後輪の摩耗をほぼ均一にすることができます。1セットのタイヤを長持ちさせることができるし、タイヤ交換も4本同時に行えます。
これは後輪駆動車の場合も同様ですが、前後異サイズのタイヤを装着するクルマもあるので、そんな場合は前後輪それぞれのタイヤが摩耗した時が交換タイミングになります。
ただし、前後どちらかのタイヤが交換時期に来たタイミングで、反対側のタイヤも摩耗が進んでいる場合は一考の余地があると思います。
気分的にはジャストのタイミングで交換したいのですが、ある程度摩耗が進んでくると排水性が悪くなってきます。さまざまなタイヤメーカーが異口同音に言うのは、5分山を下回ると耐ハイドロプレーニング(=アクアプレーニング)性能が明らかに落ちてくるということです。
残りのタイヤを、まだ5分山なのに交換するのは現実的には難しいと思いますが、4分山3分山あたりになっていたら、ウエットの安全性を考えて同時交換を強くお薦めしたいと思います。
またミニバンなど車高の高いクルマは特に気を付ける必要があるのですが、前輪の外側だけ摩耗が進んでしまう(偏摩耗)ことが起こります。普段から注意していて、早めにローテーションをすることをお薦めします。
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