■安全装備の充実で“軽”が選択肢に
軽自動車ユーザーの多様化というものが、今日の軽自動車需要が目立つことにもつながっているともいえる。
いまの傾向を“軽自動車人気”とするひともいる。だが積極的に好んで乗るひともいれば、維持費負担の問題などで“現実的な選択肢”として軽自動車を選ぶひともいるので、筆者としてはいまの状況を“人気”とするのには少々違和感を覚えている。
軽自動車ユーザーの多くは登録車という選択肢は想定していない傾向があると前述したが、それでも過去には“リッターカー”などと呼ばれる、登録車のコンパクトカーと比較検討するひとも存在する。
10年までは遡らないが、一昔前には自動ブレーキなどの安全運転支援デバイスについては、軽自動車の先行採用が目立ち、そして圧倒的に充実していた。積極採用していった理由はメーカー個々に事情が異なるかもしれないが、軽自動車にはどうしても“安全性”に対する不安というものがつきまとっていた。
「登録車よりは事故になった時のダメージが大きい」というのである。そのイメージを払拭するためにも、安全運転支援デバイスが先行して充実していったのかもしれない。
コンパクトカーもモデルチェンジのタイミングで、安全運転支援デバイスを充実させており、いまでは軽自動車と比べても見劣りしないものとなっている。
■生存空間や燃費ではコンパクトカーに軍配
軽自動車とコンパクトカーを比較購入検討するひとは、安全性をより意識するひとが多いと販売現場で聞いたことがある。
“事故時のダメージの違い”については、事故のシチュエーションが千差万別なこともあり、一概には説明できないようだが、「規格の関係もあり、生存空間はコンパクトカーのほうがあります」といった説明をすることは多いとのこと。
人気のハイト系軽自動車では、後席に座ると頭上付近にリアガラスがあったりするが、コンパクトカーでは、そこに余裕が生まれるというのである。
また、軽自動車は乗車定員が4名となるが、コンパクトカーは5名となることもアピールするとのこと。時おり、軽自動車を乗車定員オーバーで運転していて大きな事故になったというニュースを聞く。
確信犯的に定員オーバーで運転することもあるだろうが、なかには4名と知らなかったというケースもあるようだし、その点でも海外からの観光客が軽自動車を定員オーバーで運転していた摘発されるケースも目立つようだ。
また、軽自動車は燃費がいいとされているが、実走行燃費ではアクセルを踏み込む頻度も多くなるので、ケースにもよるが20km/Lをやや下回る程度の燃費性能が限界などともされることもある。
あるひとは、コンパクトカーから軽自動車に乗り換えたのだが、「確かに給油時の給油量は少ないのだが、ガソリンタンク容量が少ないことに気がついた。そのため給油頻度も増えたことにも気がついたので、コンパクトカーに戻した」と話してくれた。
■割安感が軽自動車の大きなメリット
税金などが優遇される軽自動車が登録車と比較して、新車購入時にどれぐらいメリットがあるか見ていこう。サンプルとしてスズキ スペーシア ハイブリッドXと、スズキ ソリオ ハイブリッド MXを比較した。価格よりも装備面などで近いことでこのふたつのサンプルを選択している。
スズキのウエブサイト上のシミュレーションで試算すると、スペーシアの支払い総額は189万6395円、一方ソリオは228万3830円となった。車両本体価格で32万5600円、販売諸費用で8万535円ソリオのほうが高くなっている(今回の見積りではオプションはスペーシアのほうが1万8700円高くなった)。
諸費用では、ソリオは自動車税が月割課税され、環境性能割も加算、重量税は1万9000円高く、自賠責保険料が440円高く、販売諸費用が3145円高くなっていた。
こうやって比較すると、軽自動車がかなり割安で購入できることがより鮮明となっている。
過去には、軽自動車の値引きがかなり限定的なものとなっていたので、値引きも含めた支払総額ではコンパクトカーも購入時にはかなり軽自動車と“いい勝負”になっていたのだが、いまどきは軽自動車もかなり値引きが拡大しているので、購入費用面で見れば軽自動車は圧倒的に割安感が出てしまっているのが現状である。
リセールバリューでは軽自動車がコンパクトカーよりはるかに良いものとなっている。今回の試算をベースに、5年払いで残価設定ローンプランを試算した。すると支払い最終回分の額を車両本体価格で割ることで、簡易的に残価率の目安を計算すると、ソリオが約18%なのに対し、スペーシアは約28%となった。
今回はソリオで試算したが、試しに同様の試算で大ヒットしているトヨタ ルーミーを見ると、残価率目安は30%となった。また、軽自動車販売ナンバー1となっているN-BOXでは約35%となっている。リセールバリューのブランド間格差はコンパクトカーのほうが目立つようだ。
ただし、これは各ブランドの残価設定ローンプランをベースにした、あくまで残価率の目安であり、実際の5年後の中古車市場での相場を現すものではないことだけは注意してもらいたい。
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