■プリウス=ハイブリッドはもう古い? 現行プリウスの苦労
大ヒットだった3代目の流れを壊さぬよう、4代目プリウスをデビューさせるのは至難の業だっただろう。新プラットフォーム「TNGA」採用の第1号車であり、個性的なエクステリアデザインと、プリウス待望の4WD「E-four」を搭載する。しかし、30系以上のヒットにはならなかった。
エクステリアデザインが酷評される4代目だが、筆者は販売不振の原因がほかにもあると考える。それは、プリウスが特別なクルマではなくなってしまったという点だ。
30系を販売している当時、プリウスは「ハイブリッドのクルマ」、アクアは「ハイブリッドの小さいの」と言われることが多かった。この言いまわしで、営業マンも「プリウスを見に来ていただいたんですね」とわかっていたのだ。
しかし、4代目が登場した2015年には、クラウン、エスティマ、ハリアーに加え、カローラ、ノア・ヴォクシー、シエンタでもハイブリッドが存在する。ハイブリッドはトヨタ全体のシンボルとなり、プリウスのことを指す固有名詞ではなくなった。
4代目プリウスのセールスポイントは、TNGAによる走行性能の向上、トヨタセーフティセンスPを装着するなど安全性の高さである。もちろん性能の向上には目を見張るものがあったが、ユーザーが期待していたのは、ハイブリッド技術の大幅な進化だったのではなかろうか。
EV走行できるレンジが広がり、燃費性能も良くなっていたが、強烈なインパクトとは言えない。ハイブリッドを代名詞に、人気を伸ばしたプリウスは、ハイブリットが一般化されたことにより、その強みを失ってしまったと考える。
販売現場でもプリウス推しは少なくなり、他のラインナップと横並びになる。ハイブリットの先駆者として、圧倒的な個性が光るプリウスの姿はない。先進技術が広く一般化されるのは喜ばしいことだが、同時にプリウスにとっては厳しい環境となってしまった。
■プリウスのお客はどこへいった?
スマッシュヒットとなった30系プリウスも、前期モデル登場から12年、後期モデルも登場から約10年が経過した。3代目プリウスは、そろそろ買い替えの時期を迎えている。
30系プリウスユーザーの代替活動は進んでいるのか、販売店に話を聞いてみた。
「若い30系プリウスのオーナーは、ハリアーやRAV4、そしてヤリスクロスやライズなど、SUVに買い替えるケースが多いです。プリウスからプリウスへの代替は少なくなりました」
「また、30系プリウスのオーナーには高齢層も多く、現在のクルマを最後のクルマとして、免許を返納するという話も多く聞きます。あえてプリウスを選ばなくても、ハイブリッドの選択肢は多くありますし、耐久性の高いプリウスなので、代替は思ったようには進みません」
もともと4チャネル取り扱いで、販売網の広さがあったプリウスだが、全車種併売によって、そのアドバンテージは崩れた。多くのユーザーに、ちょうどいいと思われていたプリウスも、選択肢が増えた今、魅力的に映らなくなってきているのだろう。
プリウスがもう一度復権するためには、進化した新しいハイブリッド技術の搭載が必須となるだろう。ハイブリッドの先駆者である以上、この技術で他社はもちろん、トヨタのライバルにも負けられない。プリウスはハイブリッド技術の先頭を、常に走り続ける存在であることを期待されている。
今もまだ多く走る、2代目・3代目のプリウスたち。このオーナーたちが振り向き、魅力に感じる5代目を、是非作り出してほしい。ハイブリッドの新たなステージを、新型プリウスが見せてくれることを期待したい。
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