■船舶などの用途にはすでに開発が進められている
といった流れを受け2020年度の決算発表の際、長田役員が大型車のパワーユニットとして水素エンジンの可能性についてコメントした。
少し詳しく解説しておくと、すでに水素エンジンは船舶など大型ディーゼルエンジンの代替として開発が進められている。1000馬力以上のパワーユニット、水素エンジンになる可能性大きい。
その場合、水素を液体で搭載する。液体にすれば1kgあたりの燃費は軽油よりいい。
前述のレースカー、7kgの水素で20L分のガソリンと同じ距離を走れる。20Lのガソリンの重さ、およそ15kg。ただ液体水素は驚くほど軽いため、タンク容量は800気圧の高圧水素と同じくらい必要。一方、タンクの効率は高圧水素より優れてる。
800気圧の高圧タンク、大きくしようとすればさらなる強度が必要になってくる。かといって小さいタンクをたくさん積むと、スペース的にも価格的にも不利。
液体水素であれば大きいタンク一つで済む。したがって総合効率で考えたら高圧水素を使う燃料電池と、ほぼ同じくらいになると考えられる。大いに悩ましいところ。
ちなみになぜ燃料電池だと液体水素を使えないのか?
液体水素、マイナス253度と低く、気体にする際、ある程度の熱が必要。暖めないと凍り付いちゃいますから。燃料電池だと暖める熱を作れない(電気で暖めたら全体の効率落ちる)。水素エンジンであればエンジンを冷やした後のお湯がふんだんに使えるのだった。
■乗用車用ならやはり電気自動車が高効率
もちろん今後の技術開発によって状況は変わってくると思う。燃料電池も水素エンジンも進化していく。現時点での燃料電池と水素エンジンの状況を並べると……
1)効率的には大差なし。
2)水素エンジンは液体水素を使える。ただ液体水素は長い時間の保存ができず、気体にするシステムも大がかり。乗用車サイズだと高圧水素のほうが効率よい。
3)出力的にはいい勝負。
4)エンジンだと長い間掛けて確立した技術が使える。
5)大型ディーゼルのように使用時間が何万時間となると、耐久性で燃料電池は既存の技術を使う水素エンジンに届かない。
6)競技車両やスポーツカーのようにエンジン音やエンジンフィールが重要になるパワーユニットだと水素エンジンはガソリンエンジンと同じ音と振動を楽しめる。
以上。乗用車用のパワーユニットとして使うのなら、小型車両は電気自動車が最も効率よい。
大型乗用車やSUV、ミニバンなどは電気自動車か燃料電池。ディーゼルエンジン搭載の大型車になると、燃料電池か水素エンジン。モータースポーツやスポーツカーに限って言えば水素エンジンもあり。といったあたりになるだろう。
繰り返すが2021年時点での技術をベースにした予想です。
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