■日本市場を半ば見捨ててスカイラインは王座陥落
今の日本車には、海外市場を中心に販売される車種が多い。国内の販売比率は、乗用車メーカーについてはダイハツを除くと20%以下だ。
そのために歴史の長い車種、特にセダンを見ると、かつては日本向けに開発されて売れ行きも好調だったのに、今は陥落しているパターンが多い。
この典型が日産スカイラインだ。初代モデルの発売は1957年だから、1955年に誕生したトヨタクラウンに匹敵する長寿ブランドになる。
1998年に発売された10代目(R34型)までは基本的に国内向けに開発され、高性能モデルのGT-Rも含めて高い人気を得ていた。
しかし2001年に発売された11代目(V35型)は、インフィニティG35として海外でも売るようになった。インフィニティはトヨタのレクサスに相当する日産の上級ブランドだ。
12/13代目スカイラインもインフィニティがメインで、ボディが拡大され、国内の売れ行きをさらに下げた。
ちなみにケンメリの愛称で親しまれた4代目スカイラインは、1972年に発売されてヒット作になり、1973年の登録台数は1か月平均で1万3133台に達した。
この台数を2017年の1か月平均に置き換えると、小型&普通乗用車で1位になったトヨタプリウスの1万3409台に迫る。当時のスカイラインは国民的なアイドルで、超絶的な人気車であった。
ところが今は下落が激しく、2017年の1か月平均は243台だ。1973年の2%に過ぎない。今のスカイラインはフロントマスクにインフィニティのエンブレムを装着するなど、海外向けであることを中途半端にアピールしている。
売れ行きの低下も仕方ない。このほか日産では、セドリック&グロリアがフーガになって苦戦する。シーマも海外指向を強めて売れ行きを下げた。
トヨタではセルシオが、レクサスLSとして売られるようになって登録台数が減った。トヨタアルテッツァもレクサスISになって人気を低迷させる。
トヨタカムリも海外向けで伸び悩む。ホンダのアコード、スバルのレガシィB4など、大半の上級セダンが海外重視の車種になり、国内市場を見捨ててしまった。
かつての日本市場では、セダンが王者だったが、今は陥落している。車種ではなく、カテゴリー自体が陥落したのだ。海外でもセダン離れが進むが、日本は特に顕著だ。
■悪路走破性が本格的過ぎて王座陥落 三菱パジェロ
SUVを人気のカテゴリーに押し上げた先駆けが、1982年に初代モデルを発売した三菱パジェロだ。
それまでにも4WDとして、トヨタランドクルーザー、日産サファリ、スズキジムニーなどがあったが、いずれも悪路を走る作業車の位置付けだった。
ところが初代パジェロは乗用車感覚が強く、一般のパーソナルユーザーが購入している。パジェロから4WDの流れが変わり、やがてSUVと呼ばれるようになった。
1980年代には、トヨタハイラックスサーフ、日産テラノ、いすゞビッグホーンなど、オフロード向けのSUVが好調に売れてブームになった。
この流れを受けて、1990年代に登場したのが、トヨタRAV4、ホンダCR-V、三菱RVR、スバルフォレスターといった前輪駆動をベースにしたシティ派SUVだ。
悪路の走破力は、パジェロやランドクルーザーのような後輪駆動をベースにした副変速機付きの4WDを備えるオフロードSUVに負けるが、シティ派SUVは乗用車系のプラットフォームを使う。
そのためにオフロードSUVに比べると重心が下がってボディは軽く、舗装路での走行安定性、動力性能、燃費、乗降性、居住性、積載性など、日常的な機能を幅広く向上させた。
その結果、SUVではシティ派のシェアが拡大して今日に至り、オフロード派は売れ行きを下げた。その典型が三菱パジェロだ。
1980年代にはクルマ好きの若年層が多く、景気も良かったから、パジェロでスキーに出かけるのが一種のトレンドになった。これが今では、すっかり廃れてしまった。
それでも先に挙げたハイラックスサーフ、テラノ、ビッグホーンなどは、日本では販売を終えている。そこまで含めて考えれば、パジェロの存続は立派といえるだろう。
SUVの本質ともいえる、悪路走破力を突き詰めた貴重に車種になっている。
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