毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はトヨタ ファンカーゴ(1999-2005)をご紹介します。
文/伊達軍曹 写真/TOYOTA
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■ヴィッツをベースに多目的に使える室内空間を目指し登場したファンカーゴ
初代トヨタ ヴィッツの全長と全高を拡大することで、全長3860mmの小さな車とは思えないほどのユーティリティ性を実現。そして実用車然としていながらポップなデザインも高評価となり、スマッシュヒットを記録。
好評ゆえ、そのまま「2代目」へのフルモデルチェンジが行われるかと思いきや、メーカー内での検討の結果、実質的な後継モデルはまったく別の名前の、ちょっと違うコンセプトで登場。そのため結果として1代限りで消滅した、愛すべき実用車。
それが、トヨタ ファンカーゴです。
トヨタ ファンカーゴは、初代ヴィッツとプラットフォームを共有する世界戦略車として1999年9月に発売されたコンパクトワゴン。
ボディサイズは全長3860mm×全幅1660mm×全高1680mmで、これは初代ヴィッツより250mm長く、180mm背が高いという数字です。
そして「住まいの部屋」をイメージして作られたという室内は高さ1290mmで、最大室内幅は1370mm。小さな車ですが、後席をフロア下に格納できる「リトラクタブルリアシート」と相まって、フラットで広い室内空間が実現されていました。
またラゲッジスペースは荷物を積むだけでなく、ユーザーのライフスタイルに応じて「人も乗り降りする」ことを前提に設計されたため、リアゲートは通常の上開きではなく「横開き式」が採用されました。
運転席まわりではコラム式シフトと足踏み式のパーキングブレーキが採用されたため、前席から後席への移動も容易で、後席のシートアレンジも自由自在。
そのためファンカーゴの後部空間はうたい文句どおり「部屋」として使うこともできるぐらいの、豊かな可能性を秘めた空間でした。
搭載エンジンは、FF車が最高出力88psの1.3L直4と、同110psの1.5L直4の2種類で、4WD車には1.5Lのみが用意されました。
トランスミッションは全車、電子制御4速ATです。
そのような「楽しく使える小型実用車」であったトヨタ ファンカーゴはヒット作となり、「ヤリスのバン」という位置づけで販売された欧州でも高い評価を受けたようです。
ファンカーゴは2002年8月にマイナーチェンジを実施し、当初の勢い減じたものの、それなりに堅調に売れていましたし、何より「ファンカーゴ」という車名が人々の間で好意的に浸透していましたので、そのまま2代目へフルモデルチェンジされるかと思われました。
しかし2005年9月に生産終了となった初代ファンカーゴは翌10月に販売終了となり、結局、「2代目ファンカーゴ」は登場しませんでした。
そして、トヨタ自身は明言していませんが、2005年10月に「高速大容量スタイリング」というキャッチフレーズを伴って発売された「トヨタ ラクティス」が、事実上の後継モデルとなりました。
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