■スマッシュヒットも2代目が登場しなかった理由とは?
愛らしいが、愛らしいだけではない「本当に使える実用車」として支持を集めたトヨタ ファンカーゴという車名が、あっけなく1代限りで消滅してしまった理由。
それは、当時のトヨタには「実用車クラスにおけるフルモデルチェンジ(ブランドの連続性)」という概念がなかったからです。
クラウンなどのクラスになると話はまったく別ですが、ファンカーゴのような車が属する大衆実用車のクラスでは、あるブランドを2代目、3代目へと変革させながら連続させるのではなく、「その時代時代のニーズに応じた新しい車」をとにかく作りました。
で、時代のニーズを読みながら新しく作った車のイメージが、たまたま以前使っていた車名と合致するようなら、同じ車名を引き継ぐ。しかしそうでない場合は、時代時代に応じた新しい車名を付ける――というやり方を採用していたのです。そして今でも、そのやり方の一部は踏襲されているはずです。
そして、ファンカーゴの次に「時代時代のニーズに応じて新しく作られたハイトなコンパクトワゴン」は、どうやら“ファンカーゴ”というイメージではなかったせいか、まったく別の名前が着けられました。
それが「ラクティス」です。
2005年10月に、ファンカーゴに代わって登場したラクティスは「多様なニーズに1台で応えるハイクオリティコンパクトカー」を標榜する一台。
エンジンは当時のヴィッツと同じ1.3Lと1.5Lですが、1.5LのFF車にはパドルシフトとスポーツモードを設けるなど、ほんわかしていたファンカーゴとはずいぶんキャラが異なる車になりました。
そして乗り味というか足回りのセッティングも、ぐっとスポーティなものへと変わったのがラクティスの特徴です。
そんなラクティスもトヨタの優秀な皆さんが知恵を絞り、たぶんですが喧々諤々の議論を経て、車名やキャラクターの変更を行ったのでしょう。
それゆえ外野の素人である筆者が、それについてとやかく言うべきことは何もありません。
しかしファンカーゴのことは鮮明に覚えているのに対し、ラクティスのことはあまり思い出せないし、特に思い出したいとも思えない――という事実から考えると、「愛されキャラな実力派」という稀有な立ち位置だったファンカーゴの、正常進化形を見てみたかったな……という思いは、正直あります。
■トヨタ ファンカーゴ主要諸元
・全長×全幅×全高:3860mm×1660mm×1680mm
・ホイールベース:2500mm
・車重:1030kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1496cc
・最高出力:110ps/6000rpm
・最大トルク:14.2kgm/4200rpm
・燃費:15.0km/L(10・15モード)
・価格:148万8000円(1999年式 G FF)
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