自動運転車の事故はドライバーの責任? クルマの責任?? 【自律自動運転の未来 第15回】

■システムの設計上の欠陥はシステムの責任

 万が一、事故が発生した場合は、システムに記録されているセンサー稼働状況や自車周囲の光学式カメラやドライバーモニターカメラの映像をはじめ、数多くの情報が検証され、ドライバーの責任なのか、それともシステムの責任なのか、はたまた両者に責任が発生するのかなど一事例ごと、検証が行われます。

 もっとも、一口に事故といっても、発生した事故の主たる原因となる「第1当事者」が誰になるか、ここが過失割合や損害賠償の範囲を決定する重要な点です。

 仮にそれがレベル3稼働時に発生した事故であれば慎重な判断が求められますが、幸いにも執筆時点(2021年6月12日)では前例がありません。

 ここからはわかりやすく、ドライバーの責任と、システムの責任、この大きく2つに分類し、現行の保険制度に照らし合わせて考えてみます。

 ドライバーを含む「人の責任範囲」はとても明確で、すでに法律において明文化されています。「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」。

 この文言は、民法第709条に定められたもので過失責任主義を示し、損倍賠償制度の考え方を説明しています。過失責任主義とは、故意や過失がある場合に限って当事者が損害発生時の賠償責任を負うという考え方です。

 対するシステムの責任範囲は少し複雑で、システム設計と、システム運用に分かれます。

現在、自動運転技術が抱える課題のひとつに「協調」がある。運転するドライバーと車両との協調も重要だが、「(自動運転技術が搭載されていない)他の車両と(自動運転技術が搭載されている)自車両」との協調も重要なテーマ。法的な線引きが進められている
現在、自動運転技術が抱える課題のひとつに「協調」がある。運転するドライバーと車両との協調も重要だが、「(自動運転技術が搭載されていない)他の車両と(自動運転技術が搭載されている)自車両」との協調も重要なテーマ。法的な線引きが進められている

■システムは二重設計、そのうえで保険を手厚く

 いっぽうシステム設計の責任は、欠陥が証明されない限り追及されません。

 自動運転技術のシステム設計は、国連WP29でのルールに則っていることを前提に、自動操舵、自動ブレーキ、自動運転認証、サイバーセキュリティ、EDR、機能要件など各会議における決定事項に沿った詳細設計が求められます。つまり、決められた設計事項が満たされなければ販売できないわけです。

 システム運用での責任は、正しく設計されていたにもかかわらず、システムが未知の欠陥によって事故が発生したと証明された際に発生します。

 よって自動車メーカーでは、そうした事態に陥らないように、システムそのものの冗長性を高めています。

 その一例が、電源システムの冗長性です。車載センサーである光学式カメラやミリ波レーダー、LiDAR、さらには電動パワーステアリグなど、自動走行に直結するパートには、すべて二重の電源系統が確保されています。

 さらに万が一、車載センサーの一部がダメージを受けた場合(例/ミリ波レーダーが内蔵されたフロントバンパーの破損)でも、走行中であれば停止できるまでの制御を担保する「ミニマル・リスク・コンディション/Minimal risk condition」という考え方が採用されています。

 それでも、避けられない事故の発生は混合交通である以上、現時点においてゼロにすることが非常に難しい、これが実状です。

 よって日本では、自動運転技術をもたない一般の車両に加えて、自動運転車両(現時点はレベル3)においても損害保険で一定レベルの損害賠償をサポートする仕組みが採られています。

 ご存知のように、日本の自動車に関する損害保険は「自賠責保険」と「任意保険」に分類されます。

 自賠責保険は自動車損害賠償保障法(自賠法)で契約が義務づけられていることから「強制保険」とも呼ばれます。人身事故に対して被害者1人あたり、怪我を負った場合に120万円、死亡された場合に3,000万円、後遺障害を負った場合では障害等級などにより75~4,000万円の支払いが定められています。

日本の自動車保険制度はかなり進んでいて、だからこそ法制度も進めやすくはあるが、それでも課題は多く、ひとつひとつ整理している段階(AdobeStock@BlueBeans)
日本の自動車保険制度はかなり進んでいて、だからこそ法制度も進めやすくはあるが、それでも課題は多く、ひとつひとつ整理している段階(AdobeStock@BlueBeans)

 自動車保険は「任意保険」と呼ばれます。保険契約者が任意に契約することができ、自賠責保険では補償されない様々な損害を補償する保険です。ちなみに、対人賠償保険の加入率は75%前後(出典/損害保険料率算出機構)で推移しています。

次ページは : ■「レベル3」でも「運行支配」はドライバー

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