■年が進むにつれ反転する人気
まずはグラフを見てもらいたい。これは自販連(日本自動車販売協会連合会)の統計をもとに、2016年度(2016年4月~2017年3月)から2020年度(2020年4月~2021年3月)までの、各年度締めでの年間販売台数の推移を表したものとなる。
2016年度は約1.4万台の差をつけてヴェルファイアのほうが売れていたのだが、翌2017年度はわずか1983台差ではあるがアルファードが逆転、以降アルファードとの差は開く一方となり、2020年度にいたっては、ヴェルファイアはアルファードの販売台数に対して約13.8%となる1万4749台で終わっている。
つまり、現行モデルがデビューして1年後ぐらいには、すでにヴェルファイアの販売台数は下降線をたどっていたのである。
2020年5月からの、トヨタ系ディーラー全店での全車(一部を除く)併売化実施前は、アルファードはトヨペット店のみ、ヴェルファイアはネッツ店のみの専売となっていた。
アルファード、ヴェルファイアともに、見た目は異なるものの、かなり押しの強いエクステリアや、ゴージャスなインテリアは共通なのだが、より若々しさを強調した押しの強さを持つヴェルファイアは年齢の若い人、そのなかでも“やんちゃなお客”が目立っていたようだ。
トヨタが全店併売化実施を表明した頃に販売現場で聞くと、「取り扱い車種が増えるのは歓迎ですが、ヴェルファイアはちょっと……」という話をセールスマンから聞いたことがある。
突っ込んで聞いてみると、契約してもらったお客のなかで、明らかにフェンダーからはみ出す大径タイヤへの履き替えや、透過率が明らかに違法とわかるほど低いウインドウフィルムをディーラーの整備工場で装着して納車して欲しいという“やんちゃなオーダー”が結構目立つのが気になるとのことであった。
「客商売なので、正面切って断るのもなかなか難しいし、それがもとでトラブルにもなりかねない」というのが、ヴェルファイアに距離を置きたい、専売の頃にはヴェルファイアを扱っていなかった、トヨタ系セールスマンの本音のようであった。
ディーラーの整備工場は監督官庁となる、運輸支局の違法改造や不正整備に対する厳しい目が光っており、抜きうち監査なども行われるということなので、いくらお客のお願いとしても、企業コンプライアンス上、それを受け付けることはできないのである。
このような話が直接、今のヴェルファイアの状況を招いたとは思えないが、今回の全店併売化は、販売会社や販売拠点(店舗数)の統廃合などに優先して、全店舗での全車種併売化が実施された。
しかも、併売スタート時に統廃合された兄弟車は、ハイエースとレジアスエース、プロボックスとサクシードといった商用車ばかりであった。
その後は例えば、マイナーチェンジのタイミングで、タンクが廃止されてルーミーのみになったりもしているが、プレミオ&アリオンのように、どちらかが残るのではなく、両方とも生産を終了するケースなどもあった。
4月28日の一部改良はあくまで法規対応をメインとした小規模なものなので、ヴェルファイアはモノグレード化したものの、「私はやっぱりヴェルファイアがいい」というお客向けに残されたもので、近い将来には販売終了になるのではないか? という声が販売現場では多く聞かれる。
2020年5月の全店併売化スタート直後に、トヨタ系ディーラーを数軒を訪れると、いずれもショールーム内の目立つところにアルファードの大判ポスターが掲示されていた。
聞いてみると、「メーカーからかどうかはわからないが、“上”からアルファードをプッシュするように指示があった」とのことであった。その後アルファードはコロナ禍で爆発的に売れていくことになる。
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