数々の名映画で知られるクエンティン・タランティーノが手掛けたアクション映画『デス・プルーフ』は、主人公がシボレー車に乗ったスタントマンという風変わりな映画だ。
しかし、この作品には過去の様々なカーアクション映画へのオマージュが込められているという。
今回は、そんな個性的な作品をご紹介しよう!
文/渡辺麻紀、写真/NBCユニバーサル・エンターテイメント
【画像ギャラリー】タランティーノの細かなこだわり&仕掛けにニヤリ『デス・プルーフ in グラインドハウス』を観る
■カルト映画マニアのタランティーノが手掛けたB級、C級映画へのオマージュ
クエンティン・タランティーノと言えば最強の映画監督&脚本家であり究極の映画おたく。長編デビュー作『レザボア・ドッグス』(92)のときから、常に自作には彼だからこそのあらゆる映画の記憶が詰め込まれていた。
その“映画の記憶”には、いわゆる名作や傑作ではないB級、C級映画が多いのもタランティーノならでは。その偏愛が彼の作品をスペシャルにしていると言ってもいい。
そんなタランティーノが、カーチェイス映画×スラッシャー映画に挑戦したのが今回ご紹介する『デス・プルーフin グラインドハウス』(07)。
『デス・プルーフ』は、タランティーノの盟友でもあるロバート・ロドリゲスによる『プラネット・テラー』との2本立て&存在しない映画の予告編5本とまとめて『グラインドハウス』というタイトルでまず公開され、その後、1本ずつ公開された。
1本ずつになったときのタイトルが『デス・プルーフ in グラインドハウス』というわけだ。「グラインドハウス」とは低予算なキワモノ映画ばかりを2,3本立てで上映していたアメリカの映画館のことである。
■タランティーノが作るスラッシャー映画は超A級のC級ムービー
本作は2部構成になっている。まず前半はセクシーな女子たちが久々に再会しドライブしながら恋バナに花を咲かせ、いつものバーでまた違う子たちと合流。
そんな彼女たちを、ボンネットに髑髏のマークをペイントした70年製シボレー・ノヴァSSを駆る謎の男、スタントマン・マイク(カート・ラッセル)が付け回す、というもの。
スラッシャー映画とは、残忍な殺人鬼が登場して次々と人間を殺して行く、『13日の金曜日』のようなホラー映画のことで、本作ではセクシー女子たちが殺されるほう、スタントマン・マイクが殺人鬼。彼の殺人アイテムがナイフやチェーンソーではなく、車というのが本作の大きな魅力になっている。
タイトルの「デス・プルーフ」は「耐死仕様」という意味で、マイクのシボレーはどんなスタントにも耐えられる車に改造されていて、それを使って女子たちを血祭りにあげようとするのだ。
前半は雨の夜を舞台にしているせいもあってスラッシャー映画要素が勝っているのだが、後半は一転、ピーカンの昼間でカーアクション映画のほうに思いっきり振れている。
こちらも同じように車中のガールズトークで始まり、その女子たちの車を、前回のシボレー・ノヴァから69年型ダッチ・チャージャーに乗り換えたスタントマン・マイクが追いかける。が、その女子のなかにクセモノが混じっていたため、そう簡単に欲望は果たせず、凄まじいカーアクションに突入するのだ。
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