■ルーミーの売れ行き好調の理由には、トヨタの新車販売の変更の影響がある
ここまでルーミーの売れ行きが増えた背景には、複数の理由がある。最も大きな影響を与えたのは、2020年9月のマイナーチェンジで、姉妹車のタンクを廃止したことだ。
トヨタは2020年5月に、全店が全車を販売する体制に移行した。それまではルーミーをトヨタ店とカローラ店、タンクをトヨペット店とネッツ店が扱ったが、全店が全車を売るなら姉妹車をそろえる必要はない。
そこで登録台数の多かったルーミーを残してタントは廃止した。その結果、需要がルーミーに集中して売れ行きを伸ばした。
ちなみにコロナ禍の影響を受ける前の2019年の登録台数を見ると、ルーミーの1カ月平均は7638台、タンクは6210台であった。両姉妹車を合計すれば1万3848台だから、今日のルーミーを上まわる。
それでも車種数が従来の2車種から1車種に減り、ルーミーの発売は2016年11月だから、今では4年以上を経過した。1カ月の売れゆきが安定的に1万台を超えれば立派だ。
■ルーミーは軽自動車のシェア拡大対抗すべく、急遽開発されたハイトワゴンだった
この背景にはルーミーの商品力がある。もともとルーミーは、急増する軽自動車需要に対抗すべく開発された。2014年には先代ハスラーの登場を切っ掛けに、スズキ対ダイハツの販売合戦が激化して、国内の新車販売台数に占める軽自動車比率が41%に達した(2020年は37%)。
実質的に小型/普通車のみを扱うトヨタは焦りを感じて、トヨタ車ユーザーが軽自動車へ流出するのを防ぐため、ダイハツに大急ぎでルーミーとその姉妹車を開発させた。
当時から軽自動車の売れ筋は、N-BOX、タント、スペーシアなど、全高が1700mmを超えるスライドドアを備えるスーパーハイトワゴンであった。そこでルーミーとその姉妹車も、同様のボディスタイルをコンパクトカーのサイズで踏襲した。
当時から背の高いコンパクトカーは販売されていたが、スライドドアを備える車種は少数だ。トヨタポルテ&スペイドはスライドドアを装着したが、左側のみでしかも1枚だから、助手席の乗降性は抜群にいいが後席はいま一歩であった。
ホンダフリードスパイク(今日のフリードプラス)は、3列シートのミニバンがベースだから、全長は4200mmを超えてコンパクトカーと呼ぶにはボディが大きい。
そうなるとボディスタイルが軽自動車のスーパーハイトワゴンに近いコンパクトカーは、スズキソリオのみだった。2014年当時のスズキは、小型/普通車の国内販売総数が7万8290台で、2020年の10万7247台に比べると73%に留まった。ソリオの1カ月平均登録台数も、2014年は2740台で、2021年の3000~4000台に比べると少ない。
つまり当時「コンパクトカーのスーパーハイトワゴン」は、ほとんど存在しなかった。トヨタはこれを商品化すれば好調に売れて、小型車から軽自動車のスーパーハイトワゴンに乗り替えるユーザーの流出も防げると判断した。
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