実は良いことばかりじゃない!? 車の基本骨格 共通化の功罪とは

共用化で車種は違っても乗り味は「似た方向」に

 最近ではこのように詳細なものになってきていますが、ここではまとめてとりあえずプラットフォームと表現することにしましょう。プラットフォームで付け加える必要のあるものにエンジンの搭載方法があります。

 FFの場合多くのエンジンは横置きです。縦置きはFRですね。この搭載方法によってプラットフォームは異なります。ただし4WDはFFでもFRでも可能なので、ベースがFFなのかFRなのかがキーとなります。

 さらに、プラットフォームは概ねサスペンション型式が共通です。例えばフロントサスがストラット式の場合、これをダブルウィッシュボーン式には転化できません。

 ただし、リアのトーションビーム式(左右一体モノ)などはサブフレームの追加などによってダブルウィッシュボーン式(左右別モノの独立懸架)に転化している例があります。

 大事なことは、プラットフォームが同じであればサスペンションの取り付け位置も同じになるということ。これはどういうことかというと、それぞれ(前後)サスペンションのロールセンター位置が同じになり、その前後を結んだロール軸も同じになるということです。

 モジュールごとに組み替えることでホイールベースやトレッドも変化しますので、一概に同じという表現は当てはまらないかもしれませんが、異なってもそのジオメトリーを含めた方向性は似たようなものでしょう。

 つまり何が言いたいかというと、車種は異なっても似たようなハンドリングや乗り味になるということなのです。

メリットも多い共用化ながら「中途半端になる」というネガも

 さらに最近流行りのSUVもプラットフォームを共有しています。その多くが5ドアハッチバックや4ドアセダンとの共有です。ここで問題となるのが車高。ベースとなるハッチバックやセダンに対してSUVでは30~40mmも車高を上げなくてはなりません。

 もちろん、そのまま車高を上げたらサスペンションストロークの伸び側が短くなり、乗り心地やハンドリングの悪化、またロール軸が大きく変化してしまいクルマとして成立しません。

 そのため噛ませモノ等のスペーサーで修正しているのですが、SUV専用のプラットフォームを開発した方がベターなことはいうまでもありません。

 もう少し深読みすれば、設計の段階から車高やドアの数などが異なるSUVやハッチバックやセダンに共通したプラットフォームとしている、ということ。悪い言い方をすれば、どっちつかず、のプラットフォームということになります。これ「罪」の部分ですね。

 例えばS660。軽自動車でミッドシップのスポーツカー。共用できるプラットフォームなんかありません。専用設計です。しかしバカ売れするなら話は別ですが、コストカットも含めてついに生産終了となりました。

 一方コペンはミライースとプラットフォームを供用しホイールベースを縮め「D-Frame」というパッケージで独自の世界観を出しています。今日では直球オンリーでは生き残れないのです。

2009年に登場したメルセデスベンツ 4代目(W212型)Eクラス。W212型で、Cクラスとプラットフォームを共用化したため、フロントサスがストラット式に変更になった
2009年に登場したメルセデスベンツ 4代目(W212型)Eクラス。W212型で、Cクラスとプラットフォームを共用化したため、フロントサスがストラット式に変更になった

 個人的な記憶の中ではメルセデスベンツ Eクラスの3代目W211型が、2009年に4代目W212型に進化した時のこと。W212ではCクラスとプラットフォームを共用化したため、それまでW211でフロントサスがダブルウィッシュボーン式だったものがW212ではストラット式に変更されました。

 リアサスは、それまでと同じマルチリンク式(ダブルウィッシュボーンと同類)だったので、前後の整合性をとり、特にフロントサスが固められ乗り心地がハードになり、ハンドリングも奥深さが失われました。

 現在ではCクラスもEクラスもダブルウィッシュボーン式に戻っています。その頃、BMW 5シリーズは7シリーズとプラットフォームを供用していたのです。何が言いたいかはご想像にお任せします。

次ページは : 日産とルノーのクルマ作りも「共用化」で変化?

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