■マイチェンで見えてくる「ISらしさ」
インパネのデザインなどはやはり一世代前といえなくもないのですが、液晶パネルで味気なくなった(効率的になったとも言えますが)ライバルのメーター回りと比べ、アナログチックでネオレトロなスポーツセダンの匂いを漂わせています。
これがビッグチェンジしたISのエクステリアデザインとよく合っているんです。
その一方で、古くなったのでは? と思われたボディは、細部にわたる補強の効果で剛性感を高めていました。
路面の段差を踏んだ時のショックの入り方が明らかに違っていて、以前のショックの収まりは早いけれど角の尖ったものと比べ、ショックの角が丸みを帯び、ぐっとマイルドになっています。それでいながらショックの収まりもよく、すっきりした乗り心地になっています。
操縦性も、もともと前後重量配分のいいISですから、クルマのバランスがよく、コーナー入り口で前輪アウト側に乗った荷重が、コーナー半ばで適度に後輪に荷重が移り、立ち上がりで後輪にしっかり荷重が乗っていくのがわかります。
欲を言えば、この時のグリップ感とかタイヤの変形感がもうちょっとダイレクトにドライバーに伝わってくると、さらにスポーツドライブ感が増すのではないかと思います。
ただその一方、このくらいの刺激がドライバーに不安を感じさせないさじ加減なのだろうというふうにも思います。
徹底的に鋭さを求めていくと、シビアで疲れるクルマになってしまいますから、そういう意味でいいセッティングになっているのだろうと思います。
■「ネオレトロ」というプレミアム感
操縦性についてはIS 300も、IS 300hも、IS 350もひとからげに語ってしまいましたが、もちろんそれぞれにキャラクターは違います。
もっともスポーティでパワフルな350 Fスポーツだと、ダイレクトさにちょっとオブラートがかかった感覚がもどかしく感じる部分もあるのですが、3.5L V6の318馬力/380Nmのパワー&トルクは迫力があります。もう少しクリアにグリップの感じが伝わってくると、さらに刺激的になるのではと思いました。
300は2Lターボで245馬力/350Nmを発揮します。じつはこのパワーユニットのISとのマッチングが思いのほかよく、ノーズの軽さによる軽快な操縦性と、ふわっと膨らむターボのトルクの力強さがISの乗り味とよく合っていてWELLバランスだと感じました。
もっともレクサスISらしいパワーユニットだと感じたのはハイブリッドの300hでした。4気筒2.5Lエンジンの178馬力/221Nmに143馬力/300Nmのモーター出力が加わり、想像以上に速い加速性能を備えています。
しかも低回転域をモーターの強力な駆動トルクが補ってくれるのでアクセルを踏み込んだ瞬間から力強く、スタートする時やカーブの立ち上がりでクルマが不思議なくらい軽く感じられます。
300hに乗ると、レスサスISの必要以上にダイレクトさを表に出さない味付けがうなずけます。一部マニアのためにシビアで刺激的な操縦性にするのではなく、ISに乗るほぼすべての人が、刺激的で速くて楽しいと感じる味付けにセットしているということなのだろうと思います。
8年が経って、そろそろモデルチェンジが気になる時期ではあるのですが、熟成したネオレトロ(?)なスポーツセダンとして、ほかにない個性を持っているということでもあます。タコメーターをひとつとってもこれから先、アナログメーターの針を持ったスポーツセダンは見られなくなるかもしれません。
プレミアムセグメントのクルマは、「最新」も大切な要素かもしれませんが、それと同じくらい“ブランドらしさ”が大切なのではないかと思います。
その意味で、モダンなエクステリアデザインを取り入れながらの中身の熟成が見事に成功しており、ビッグチェンジを行ったことの意味は充分にあると思います。
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