タコメーターに替わる? HVのパワーメーターは何を示しているのか
タコメーターのとらえ方は、メーカーによっても異なる。そして冒頭で述べたとおり、ハイブリッド車や電気自動車が増えると、タコメーターの役割は薄れる。電気自動車はエンジンを搭載していないから、当然ながらタコメーターも装着されない。
ハイブリッドでも、日産のe-POWERやホンダのe:HEVは、駆動はモーターが担当してエンジンは主に発電機の作動に使われる。e:HEVには高速巡航時にエンジンが直接駆動する制御もあるが、基本的な役割は発電だ。
そうなると駆動を担当しないエンジンの回転数を示しても、加減速の状況を正確には反映させない(エンジン回転数と走りの間にある程度の相関関係はあるが)。タコメーターを装着してもメリットは乏しい。
そのためにハイブリッドには、パワーメーター(ハイブリッドシステムインジケーターなどの呼び方もある)が装着されている。タコメーターに似ているが、示しているのはエンジン回転数ではなく、エンジン+モーターの作動状況だ。
具体的にはアクセルペダルを踏むと、指針や光の帯が右側へ振れる。ハイブリッドシステムの負荷が小さい時はエコゾーン、さらに踏み増して駆動力が高まると、さらに右側へ振れてパワーゾーンに入る。
逆にアクセルペダルから足を離して減速状態になると、モーターが減速エネルギーを使って発電を行い、駆動用電池に充電する。この時には指針や光の帯は左側のチャージゾーンに入る。電気やガソリンをどの程度使っているのか、あるいは充電状態に入ったのか、という制御の状態が分かる。
ただしタコメーターと違って、エンジン回転数のような具体的な数値は刻まれていない。右側に振れるほど高い動力性能が発揮され、左側になるほど経済性が向上するのはわかるが、漠然としている。
そこでパワーメーターの基準は何なのか。発揮されている出力なのか、それともアクセルペダルの踏み方なのか、複数のメーカーに尋ねると以下のように返答された。
「アクセル開度と、エネルギーの回生状態を示す」あるいは「走行中の出力と回生力を示す」。
返答も漠然としているが、過去を振り返ると、2005年に発売されたハリアー/クルーガーハイブリッドのパワーメーターには、0/100/200kWという出力数値が刻まれていた。
この時にはパワーメーターがkWを単位とする共通の表示方法になり、タコメーターのように位置付けられるのかと思ったが、実際には各メーカーとも独自の表示方法を採用している。
タコメーターがない電動車でも「性能を示すメーター」は生き残る
実際の使い勝手を考えれば、ハイブリッドの制御状態がわかれば良い。パワーメーターの指針や光の帯が右側へあまり振られず、一定に保てるようにアクセルを操作すれば、経済的な運転ができる。
タコメーターのように、表示の具体的な基準が分からないと信頼性では疑問が残るが、実用的には問題ない。正確な燃料消費量を知りたければ、燃費計も装着されているので、パワーメーターの表示にこだわる必要もない。
またレクサス車などは、ハイブリッドでもエンジン回転数を示すタコメーターを表示できる。高速道路を走行中にアクセルペダルを戻すと、エンジンが停止してモーターによる回生が開始され、タコメーターの針はストンと落ちて「0」を示す。
昭和世代のドライバーは、この瞬間に肝を冷やす。従来のクルマでエンジンが停止すると、パワーステアリングは作動せず、ブレーキブースター(倍力装置)の負圧を使い切れば制動性能も低下するからだ。
慣れるまでは嫌な感じだったが、エンジンの停止と作動がわかることは、モーター駆動を併用しない従来のクルマとは違う楽しさではあるだろう。タコメーターが「0」の状態で走る時は、燃料を消費していないからトクした気分にもなる。
この効用を考えると、電動化が進む今後も、タコメーターに代わるパワーメーターは存続するだろう。ハイブリッドシステムや電動機能の負荷、回生による充電の状態がわかると、経済的な運転に役立って走りの楽しさにも繋がるからだ。
最近は運転支援機能も普及して、先行車との車間距離を保ちながら追従走行できる。運転支援機能の作動中と、自分でペダル操作をする時では、パワーメーターの動きがどのように変わるのか。燃費計と併用して、運転支援機能を相手に経済運転を競う楽しさも味わえる。
電動化の時代には、新しいクルマの楽しみ方が生まれるわけだが、純粋にエンジンのみを搭載したクルマで、タコメーターを見ながら操るのも楽しい。
「5500回転を超えた領域の吹き上がりはタマランなぁ!」、といった運転をいつまで味わえるのか。昭和世代のドライバーとしては、高回転域まで回せる自然吸気エンジンの6速MT車が、妙に愛らしく思えてきた。
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