■64年の歴史のなかで存続の危機は2度あった
スカイラインは1957年4月の誕生だから2022年に生誕から65年になる。その間に何度か消滅の危機に直面した。最初の危機は、誕生から10年足らずの時だ。プリンス自動車が日産に吸収合併されたため、存続の危機に陥ったのだ。
この時はブルーバードなどと部品の共用化を図るとともに、差別化を明快に打ち出して危機を乗り切っている。日産と合併した後にフルモデルチェンジした3代目のハコスカは大ヒットを飛ばし、ブルーバードと並ぶ日産の主役に躍り出た。
もうひとつの存続危機は、1999年だ。日産の経営が悪化し、フランスのルノーの軍門に下った。日産のCEOに就任したカルロス・ゴーンは大ナタを振るい、合理化を積極的に推し進めた。販売店を統合し、国内専用モデルの多くは整理の対象となっている。
次期モデルの開発は凍結されたのだ。スカイラインも例外ではなく、リストラ車のリストに上がった。
だが、プリンス党、スカイライン党と呼ばれる熱狂的なファンに支持されている。また、走りの評価も高い。昔はブルーバードが日産の代表だったが、コロナと同じように1990年代を前に求心力を失っている。
これに対しスカイラインは外様だが、1970年代には人気、販売量ともに日産の代名詞的な存在、エース的な存在にのし上がった。1990年代に失速したが、レースでも活躍するイメージリーダーのGT-Rがスカイラインの魅力を引き上げ、販売の落ち込みを小さくしている。
■牙を抜かれたV6エンジンのスカイライン
ファンが多かったため、日産の首脳陣は驚くべき方法でスカイラインのモデルチェンジを敢行し、11代目を送り出した。日産は1999年の東京モーターショーに「XVL」と呼ぶコンセプトカーを参考出品している。これを商品化し、インフィニティチャネルで発売しようと考えていた。
日本では新しいネーミングで登場すると思われていたが、2001年夏に日産から衝撃的な発表がある。このXVLがスカイラインを名乗って正式デビューを飾ったのだ。日産の販売店にとってもファンにとっても寝耳に水の発表だった。
11代目のV35系スカイラインは伝統の直列6気筒エンジンと決別し、V型6気筒エンジンを積んでいる。丸型テールランプを採用しなかったし、売りのひとつだったターボ搭載車もない。
エンジンもハンドリングも大人っぽい味付けだが、刺激的じゃなかった。2006年にモデルチェンジして登場した12代目のV36系スカイラインも似た性格だ。2013年秋に13代目のV37系スカイライン(現行型)になり、V6エンジンにモーターを組み合わせたハイブリッド車が誕生する。
■高性能スポーツの走りを再び! 『400R』の登場
日本向けはセダンだけに絞り込まれ、バリエーションも絞り込まれた。が、2014年5月に2Lの直列4気筒ターボが加わり、2016年春には先進の運転支援システムも盛り込んだ。
そして2019年7月のマイナーチェンジを機に、ハイブリッド車にプロパイロット2.0を搭載。また、V6ツインターボのスポーツセダン、400Rを仲間に加えている。スカイラインらしい高性能スポーツを復活させたのだ。
だが、現行モデルが登場した頃にはユーザーの嗜好はミニバンを経てクロスオーバーSUVに移っていた。V6エンジンになって以降のスカイラインに疑問符を持っているファンも多い。
彼らは不信感を抱き、他メーカーの上級ブランドや輸入車に乗り換える人も多かったのである。だから20世紀の勢いはない。
今は405psを発揮するハイパワーモデルの400Rが販売の中心になり、5割近くが400Rだ。が、今の日産には勝ち抜く競争力と体力がないから販売は伸び悩んでいる。とはいえスポーツモデルが販売の主役となるのは、スカイラインならではの現象だ。やはりファンは高性能セダンを期待しているのである。
2019年度の下半期(2019年10月〜2020年3月)の平均登録台数は500台ちょっとだ。新型コロナウイルスの影響をモロに受けた2020年上半期(2020年4月〜9月)までの登録は、この半分以下の平均218台にとどまった。
下半期(2020年10月〜2021年3月)までは平均359台と、ちょっとだけ盛り返している。だが、かつての栄光を知っているとさびしい限りだ。
4代目の「ケンとメリー」、これに続く5代目の「ジャパン」は年に15万台以上の販売を記録した。販売不振で早めに生産を終えた10代目のR34系スカイラインでさえ、4年間の月平均販売は1000台を超えている。
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