純エンジン車はもういらない? 全車電動化の功罪とは

純エンジン車はもういらない? 全車電動化の功罪とは

 2030年には東京都、2035年には日本での純エンジン車の新車販売が禁止される方針だが、最近発売された新車でも、純エンジン車が設定されず、ハイブリッド専用車になるクルマが増えてきている。

 純エンジン車がラインナップされずに、ハイブリッド専用車になったことで、弊害はないのだろうか?

 こうした全車電動化への功罪について、モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。

文/渡辺陽一郎
写真/トヨタ 日産 ホンダ

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■この先、全車ハイブリッド専用になる車種が増えていく

3代目ノートはe-POWER専用車として登場した。今後も日産の新車は大多数が電動車となる予定(中にはフェアレディZのような例外もあるが)<br>
3代目ノートはe-POWER専用車として登場した。今後も日産の新車は大多数が電動車となる予定(中にはフェアレディZのような例外もあるが)

 従来は純エンジン専用車だったり、純エンジンとハイブリッドを両方ともに用意した車種が、ハイブリッド専用車にフルモデルチェンジするケースが生じている。

 その代表がノートだ。先代型は直列3気筒1.2L、NAのHR12DE型、これにスーパーチャージャーで過給するHR12DDR型、そしてハイブリッドのe-POWERを選べたが(NISMOを除く)、現行型はe-POWERのみで、純エンジン車は設定されていない。

 ジュークの後継として登場したコンパクトSUVのキックスも、e-POWERのみで純エンジン車はない。このほか次期エクストレイルもe-POWER専用車になると見られ、日産では純エンジン車の廃止が続いている。

新型ヴェゼルのハイブリッド比率は93%と圧倒的にハイブリッドが人気。純ガソリン車はターボが廃止されベーシックな1グレードと完全に+α扱いとなってしまった。最近のホンダの潔い?ところだ
新型ヴェゼルのハイブリッド比率は93%と圧倒的にハイブリッドが人気。純ガソリン車はターボが廃止されベーシックな1グレードと完全に+α扱いとなってしまった。最近のホンダの潔い?ところだ

 ホンダの現行ヴェゼルも、4グレードの内、純エンジン車はベーシックなGのみだ。ほかはすべてハイブリッドのe:HEVになる。販売比率を見てもハイブリッドが全体の93%を占めている。

 以前はハイブリッドが豊富なのはトヨタだった。1997年に世界初の量産ハイブリッド車として初代プリウスを発売して以来、プリウスα、SAI、アクアという具合にハイブリッド専用車を用意した。

 ところが2021年5月のデータを見ると、トヨタの小型/普通乗用車の新車登録台数に占めるハイブリッドの比率は約40%だ。

 むしろ日産の比率が高い。マイルドタイプのSハイブリッドを搭載するセレナまで含めると、日産のハイブリッド比率は68%に達する。ホンダのハイブリッド比率も60%と高い。

 この2つのメーカーには、軽自動車の販売比率を急増させた事情もある。2020年1~5月で見ると、国内で新車として売られたホンダ車の内、軽自動車が57%を占めた。

 日産の軽自動車比率も42%と高い。2010年はホンダの軽自動車比率が25%、日産は23%だったから、約10年間で販売状況が大きく変わった。

 つまり価格の安いコンパクトカーの需要は軽自動車に奪われ、結果的に価格の高いハイブリッド比率が高まった。大雑把にいえば、今では200万円以下の価格帯は軽自動車が中心で、それ以上は小型/普通車のハイブリッドという区分が成り立つ。

 その点でトヨタは、一部のOEM車を除くと軽自動車を扱わない。安い価格帯でもコンパクトカーを確実に売る必要があるため、ヤリスの純エンジン車には、主力となる直列3気筒1.5Lに加えて安価な1Lもある。ヤリスやヤリスクロスをハイブリッド専用車にはできず、純エンジン車の選択肢も多い。

次ページは : ■もし、ノートに1.2Lのエンジン車が用意されていたら……

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