■ノートに純エンジン車を設定してもいいのではないか
トヨタの販売店では、ヤリスの売れ方について以下のようにコメントした。
「ヤリスの主力エンジンは1.5Lの純エンジンとハイブリッドで、1Lは法人向けとされている。ところが実際には、走行距離の短いお客様が1Lエンジンで十分と判断されることも多い。1Lの価格は1.5Lに比べて約14万円安いからだ。コンパクトカーでは、安全装備などを充実させたうえで、価格の安さが重視される」。
以上のように、ノートにも純エンジン車が必要ではないだろうか。廃止した理由を開発者に改めて尋ねると「選択と集中が挙げられる。選択肢をe-POWERのみに絞り込み、開発や生産に要するコストを抑える目的もある」と述べた。
また追加されたノートオーラについては「ノートの純エンジン車を廃止した代わりに、オーラを加えたと受け取ることもできるだろう」と述べた。
ノートオーラの販売目標は、1年間に5万1000台/1か月当たり4250台とされる。ベースとなるノートの販売目標は、1か月に8000台だから、両方を合計したノートシリーズは1万2250台だ。この台数に占めるノートオーラの比率は35%だから、先代型の純エンジン比率の30%に近い。
つまり純エンジンの廃止で失った顧客数を、ノートオーラで取り戻したいわけだ。そうなるとノートオーラは上級モデルだから、粗利はさらに上乗せされる。純エンジンとCVTを開発する必要もないから、e-POWERのノートオーラは、ノートの純エンジン車よりも効率が優れている。
しかしそうなると、先代ノートの純エンジン車を所有しているユーザーはどうなるのか。ノートe-POWERでは前述の通り、価格が高すぎる。
乗り替えの対象としてコンパクトカーのマーチも挙げられるが、2020年に改良を行って衝突被害軽減ブレーキなどを充実させながら、直近となる2021年5月の登録台数は570台と少ない。マーチは発売から10年以上を経過しており、質感にも不満があるので、先代ノートのユーザーを引き継ぐには無理がある。
そこで販売店に、ノートが純エンジンを廃止した後、どの車種が需要を引き継いでいるのかを尋ねた。
「マーチは設計が古く売れ行きも低調なので、先代ノートの純エンジン車に乗っているお客様には、デイズやルークスを推奨している。車内はマーチよりも広く、ルークスであれば新しいノート以上に余裕がある。2台先の車両を検知する衝突被害軽減ブレーキ、プロパイロットなど、先進装備も充実する。しかも価格は先代ノートの純エンジン車と同程度だから、デイズやルークスに乗り替えるお客様も多い」。
このように日産の軽自動車は、コンパクトカーの顧客を奪い、さらにノートの純エンジン車の廃止を補う役目まで果たしている。
■全車電動化によってもたらされるメリット、デメリットとは
全車電動化によってもたらされるメリットは、環境性能の向上だ。メーカーにとっては、前述の通り選択と集中を図れるから、効率が高まって都合が良い。また将来を見通せば、いつかは、純エンジン車は廃止されるのだから、今のうちにハイブリッド化したほうが得策という見方も成り立つ。
逆に全車電動化のデメリットとしては、割安で魅力的なコンパクトカーがますます失われてしまう。その一方で軽自動車は一層増加して、小型/普通車はさらに下がるから、商品開発も消極的になって悪循環に陥る。
少なくともノートの乗り替え需要は、軽自動車に頼ってダウンサイジングさせず、コンパクトカーに収める必要がある。 ノートに純エンジンを用意するか、あるいはマーチをフルモデルチェンジして魅力的な車種に刷新するか、全車電動化のなかでコンパクトカーのバリエーション充実が求められている。
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