■もし、ノートに1.2Lのエンジン車が用意されていたら……
ノートは現行型でハイブリッド専用車になって、価格を大幅に高めた。先代型の1.2Lの純エンジンを搭載するノートXは約153万円、メダリストXは約166万円だったが、現行型で売れ筋のXはe-POWERだから218万6800円だ。先代型の純エンジン車から現行型に乗り替えると、価格が50万~60万円は高まる。
そこで仮に現行ノートに1.2L、純エンジン車が存在したら、どの程度の価格で販売できるのかを考えたい。
まず注意したいのは、現行ノートに1.2L、純エンジン車を加えても、先代型と同等の価格、つまり現行e-POWERに比べて50万~60万円も安くはできないことだ。
現行ノートはすべてのグレードに、7インチアドバンスドドライブアシストディスプレイ、上質な内装、電動パーキングブレーキ、エアコンのオート機能などを標準装着する。これらの装備を踏襲すれば、価格も高まってしまう。
開発者も「現行ノートに純エンジン車を150万~160万円で追加するには、インパネや装備を別々に設計にする必要があった。しかも先代ノートの純エンジン比率は、30%前後に留まったので、現行ノートはe-POWERのみとした」と述べている。
■コンパクトカーのHVは純エンジン車に比べて35万円高い
そこでライバル車で価格設定も似ているフィットとヤリスの価格差から、ノートの純エンジン車の価格を算出してみたい。
フィットで売れ筋になるホーム同士で価格を比べると、ハイブリッドのe:HEVは211万7500円だ。1.3L、純エンジン車は176万7700円だから、e:HEVは34万9800円高い。
ヤリスでは、ハイブリッドGが213万円、1.5Lの純ガソリンエンジンを搭載するGは177万3000円だから、ハイブリッドは35万7000円高い。
このようにコンパクトカーに設定されたハイブリッド車の価格は、純エンジン車に比べて35万円前後は高い。正確にはハイブリッドのみに装着される装備もあるから、実質的な価格差はもう少し縮まるが、約35万円と考えて良い。
そこで現行ノートの純エンジン車の価格を割り出してみると、ベーシックなe-POWER・S(202万9500円)に準じた純エンジン車のSは、35万円安い167万9500円だ。上級のe-POWER・Xに相当する純エンジン車のXは、同様に183万6800円になる。
この167万~184万円の価格帯は、フィットに1.3L、純エンジンを搭載するホーム、あるいはヤリスに1.5L、純エンジンを積んだGとほぼ合致する。
以上のように考えると、現行ノートの純エンジン車も十分に成り立つ。167万9500円から183万6800円という価格は、先代ノートの純エンジン車であれば、上級のメダリストSと同等かそれ以上だが、現行型は商品力が向上した。上質な内外装や上級の装備を備えた純エンジン車があっても良いだろう。
そしてノートe-POWER・XのWLTCモード燃費が28.4km/L、ノートの純エンジン車がフィットと同等の20km/Lと仮定した場合、レギュラーガソリン価格が1L当たり145円であれば(今は150円を超えるが高すぎる)、1km当たりの燃料代はノートe-POWER・Xが5.1円、純エンジン車のXは7.3円だ。e-POWERは純エンジン車に比べて、1km当たり2.2円安い。
一方、e-POWERと純エンジン車の価格差は前述の35万円だが、e-POWERは購入時に納める税額が少し安いので、実質差額は33万円に縮まる。
この33万円をハイブリッドが燃料代の節約で取り戻せるのは15万kmを走った頃だから、走行距離の短いユーザーにとって、単純に損得勘定で判断するとe-POWERは割高だ。
e-POWERには余裕のある動力性能、滑らかで静かな加速といった特徴もあり、燃費と価格のバランスだけでは片付けられないが、160万~180万円で買える純エンジン車を求めるユーザーもいるだろう。
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