なぜ大人気ミニバン「アルファード」はそんなにリセールバリューがいいのか?

 一時期のバカ売れのような販売台数からは落ち着いてきたものの、それでもここ最近、最も売れているミニバンがトヨタのアルファードだ。そして、この好調な売れゆきの主な要因にはリセールバリューの高さがあるという。

 大人気ミニバン、アルファードのリセールバリューはどれだけいいのものなのだろうか?

文/萩原文博
写真/TOYOTA、ベストカー編集部

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■アルファードがこんなにも売れている理由は?

 コロナ禍の2020年、国産新車ミニバンで最も多い販売台数を記録したのは、9万748台のトヨタアルファードだった。

新車時価格359万7000円からという高額なモデルがこれほど売れているのは驚異的としか言いようがない
新車時価格359万7000円からという高額なモデルがこれほど売れているのは驚異的としか言いようがない
何かを起因とする突発的な流行りではなく、継続的に売れている。その理由は一体?
何かを起因とする突発的な流行りではなく、継続的に売れている。その理由は一体?

 次いで多いのが7万6283台のホンダフリードと7万2689台のトヨタシエンタというコンパクトサイズミニバンであることから見ても、新車時価格359万7000円からという高額なモデルがこれほど売れているのは驚異的としか言いようがない。

 しかもこのアルファード人気は一時的なものではなく、2021年に入っても1月~3月の新車販売台数は1万台を超えてランキング第3位となり、4月は5位、5月は7位(6月は6位)と順位は下がってきているが、それでも昨年比100%超えとなっている。

 どうして、これほどまでに新車のアルファードが売れているのか。まずはその理由から迫ってみたい。

■魅力という付加価値によって新車が買いやすくなる!?

 アルファードの人気の秘密は多くの人が憧れているから。という理由だけではない。その高い人気に支えられて、「残価率」つまりリセールバリューがほかの車種に比べて非常に高くなっているからだ。

 残価率という言葉はあまり聞き慣れないかもしれないが、これは購入後、3年後、5年後の査定価格が高いと言えばわかりやすいだろう。中古車は新車のように定価がなく、需要と供給のバランスによって価格が変わる。その価格決定に非常に大きな影響を与えるのが“人気”という要素なのである。

 新車の場合、人気の高いクルマだと納車までの期間が長くなるものの、定価である新車価格が高くなるということはない(購入価格は値引きによって変わる)。

 しかし、中古車の場合、同じ年式の同じ車種であっても、人気の高いグレードやボディカラー、装備の有無などによって査定価格に大きな影響が出るものなのだ。

残価設定ローンは、最終回の支払い額がが中古市場価格を参考に設定される。つまり中古市場で値落ちしにくくて残価を高くできる車種ほど、月々の支払い額が安くなる
残価設定ローンは、最終回の支払い額がが中古市場価格を参考に設定される。つまり中古市場で値落ちしにくくて残価を高くできる車種ほど、月々の支払い額が安くなる

 そのなかでも、アルファードは抜群の人気を誇っており、圧倒的な残価率の高さを維持しているので、結果的に「リセールバリューが高い」と言われるのだ。そのアルファードの残価率の高さやリセールバリューの高さは一体どれほどのものなのか。他車と比較しながら紹介していこう。

■ほかの車種と比べてみると・・・?

 最近、自動車メーカーでは新車購入時の残価設定ローンを積極的に導入し、多くのユーザーが利用している。残価設定ローンというのは、3年後、5年後のクルマの価値である残価(買取価格)を予め設定し、諸費用を含んだ乗り出し価格から残価を引いた額を分割して支払うというシステムのこと。

 したがってアルファードのような残価が高いクルマほど、月々の支払い額が少なく乗ることができるということになる。

 例として、同じミニバンであるトヨタのノア ハイブリッド Si W×B III( 7人乗り)[344万3000円]、ホワイトパールクリスタルシャインのボディカラーで新車をWEB見積もりしてみると、残価設定型プラン60回払いで計算すると税金や諸費用は含まれていないが、「月々4万9700円」となった。

今回比較対象のノア ハイブリッド「 Si W×B III」344万3000円。本体価格はアルファードより80万円近く安い
今回比較対象のノア ハイブリッド「 Si W×B III」344万3000円。本体価格はアルファードより80万円近く安い

 同じプランで、アルファード2.5SタイプゴールドII(7人乗り)[424万円]、ボディカラーがホワイトパールクリスタルシャインで見積もりとすると、「月々5万6600円」となる。月約7000円差でアルファードに乗ることができるのだ。

特別仕様車 アルファード「S タイプゴールドII」。アルファードは残価設定ローンだと月々の支払額がノアより7000円程度高いだけなる計算のため、お得感がある
特別仕様車 アルファード「S タイプゴールドII」。アルファードは残価設定ローンだと月々の支払額がノアより7000円程度高いだけなる計算のため、お得感がある

 月々この差でアルファードに乗れるというのであれば、ノアをローンで購入しようと思っていた人も触手が伸びるだろう。しかしなぜ新車価格が大きく違うのに、これほどの差に縮まってしまうのか。これがノアとアルファードの残価の違いによるものなのだ。

■もっと比べてみた

 さらに、アルファードの残価率の高さを買取価格で検証してみたいと思う。まず比較したのは現在、絶好調の人気を誇るプレミアムSUVのトヨタハリアーだ。

日本では、自動車にそこまで興味がない人でも知っているくらい有名な「ハリアー」。アルファードとの残価設定比較結果はどうだ?
日本では、自動車にそこまで興味がない人でも知っているくらい有名な「ハリアー」。アルファードとの残価設定比較結果はどうだ?

 同じ現行モデルとなる2020年式で比べてみると、新車価格423万円のハリアー2.0Zレザーパッケージ2WD車の買取価格は320万円となっており、残価率は「約75.6%」となっている。

 一方のアルファードは398万5000円の2.5S 2WD (7人乗り)の買取価格は302万円で、残価率は「約75.8%」とわずかながら上回っている。差はわずかだが、ハリアーは2020年に登場したフレッシュなモデル。対してアルファードは登場から約6年が経過したモデルであることを考えれば、この差はスゴイ。

 さらに初の車検サイクルとなる2018年式では、旧型ハリアーの2.0プログレスメタルアンドレザーパッケージの買取価格は約247万円で残価率が「約60.8%」。一方のアルファード2.5S 2WD (7人乗り)の買取価格は280万円で残価率は「約70.2%」と10%近い差を付けているのである。

 確かにハリアーは旧型、アルファードは現行型という差はあるものの、この差はアルファードの人気を決定づけるものだ。

■比較でわかるアルファードの「強さ」

 続いては、トヨタヴェルファイア、日産エルグランドという同じミニバンで比較を行った。

アルファードの兄弟車ヴェルファイア。先代モデルはアルファード以上の人気モデルだったが、現行モデルは2017年のマイナーチェンジの頃からアルファードの売れゆきが逆転した
アルファードの兄弟車ヴェルファイア。先代モデルはアルファード以上の人気モデルだったが、現行モデルは2017年のマイナーチェンジの頃からアルファードの売れゆきが逆転した
2010年に一新して登場したご長寿モデルのエルグランド。走りのよさならアルファードに負けない
2010年に一新して登場したご長寿モデルのエルグランド。走りのよさならアルファードに負けない

 2018年式のヴェルファイア2.5Z 2WD(7人乗り)の買取価格は235万円で残価率は「約58.9%」。そしてエルグランド2.5ハイウェイスターSアーバンクロムの買取価格は198万円で、残価率は「約49.7%」となっている。

 この数字だけ見てもアルファードの残価率が高く、リセールバリューが高いということがわかってもらえるだろう。先代モデルでは、兄弟車のヴェルファイアのほうが人気は高かったが、現行モデルでは逆転。

 現在では販売店の全車種展開によって、ヴェルファイアはモノグレード展開まで追い込まれてしまった。

 アルファードは高い人気に支えられたリセールバリューの高さによって、購入したユーザーが手放す時にもクルマのよさを実感できるだけでなく、残価設定ローンで購入するユーザーにはとっては、ちょっとがんばれば手の届くクルマとなっているのだ。

 新時代の高級車として登場したアルファードは買い方次第で、多くの人に夢を与えるクルマであると言ってもいいだろう。

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