ルノートゥインゴオーナーが語る“RR車”の特徴と変遷

■生き残るために試行錯誤したRR

RRとして登場したスマート フォーツー。写真の初代は前輪の手応えが薄い乗り味だった
RRとして登場したスマート フォーツー。写真の初代は前輪の手応えが薄い乗り味だった

 98年、メルセデスがスマートでRR方式を復活させるに当たっては、この点、入念に対策が行われた。具体的には、あまり舵が利かないように、つまりあんまり曲がらないようにセッティングされていた。ノーズが向きを変えなければ、オーバーステアにもならないというわけだ。

 スマートが発表された前年の97年には、初代メルセデスAクラスが、エルク(大鹿)回避テストで横転するという大事件もあったので、メルセデスとしてはとにかく、絶対横転しない操縦性に仕上げたのだろう。

 それもあって、初代スマートは、前輪の手応えの薄い、ひたすら頼りない印象の乗り味になった。ただ、2代目でだいぶフツーになり、3代目は、ハイパワーなブラバス仕様(フォーツー)でも、ステアリングはクイックだけどテコでもリヤは流れない、鉄壁の守りの操縦性に進化している。

 06年に登場した三菱iは、リヤミッドシップと言われる位置にエンジンがあった。後輪よりは前なので、ミッドシップではあるけれど、後輪が思い切りボディの後端にあるので、エンジンの位置もとっても後ろ寄りで、RRに近い感覚だった。

 三菱iはどんなオーバーステア対策をしたのかというと、初代スマート同様、舵を利きずらくして、アンダーステア傾向にしたのでした。どんなメチャクチャなハンドル操作をしてもアンダーステアしか出ない! という、とっても安全な操縦性にすることで、リヤエンジン車特有のオーバーステアを封じ込めた。

 三菱iはデザイン含め傑作だったし、ノーズは軽快だったけれど、ひたすらアンダーステアなので、操縦性はちょっと退屈だった。

■トゥインゴは究極のRR……か!?

現代のRRにご満悦の筆者とルノー トゥインゴ。軽快な操縦性は運転の楽しみをじゅうぶんに味わえる
現代のRRにご満悦の筆者とルノー トゥインゴ。軽快な操縦性は運転の楽しみをじゅうぶんに味わえる

 では、私が購入したルノー・トゥインゴはどうか。

 トゥインゴは3代目スマートの兄弟車で、基本構造は共通しているが、走りの味付けはかなり異なる。

 我がトゥインゴ インテンス キャンバストップと、スマート フォーフォー ターボを比べると、ボディサイズやパワートレインはほぼ同じだが、タイヤサイズが違う。スマートのほうが前後とも2サイズ太い。それだけが原因ではなかろうが、スマートのほうが「テコでもリヤは流れない」クルマになっている。

 一方のトゥインゴは、四つ角の立ち上がりでアクセルを踏み込むと、軽くリヤが張り出すような挙動があった。これはかつての911をほうふつとさせるもので、これだけでクルマ好きはうれしくなってしまう。私もこの挙動に舞い上がり、トゥインゴを「現代に蘇ったナローポルシェ」と思っていました。

 ただ、この挙動はほんのわずかなもので、スポーティなサスと太いタイヤを与えられた「GT」では皆無。ノンターボ5MTモデルでもパワーがなさすぎて皆無。

 唯一、EDC(セミAT)のターボモデルでのみ味わえるものだったので、当然私はソレを買いました。

 ところが、納車されたトゥインゴ(16年式の中古車)には、そういう挙動はまったくなかった……。7万キロ近く走っていて、各部がこなれたからなのか、それともトゥインゴ登場直後に感じたあの挙動が個体差だったのか。

 アレ自体、オーバーステアのかすかな痕跡みたいなものだったので、簡単に消えてしまう、かげろうのようなものかもしれない。

 ではトゥインゴを走らせてつまらないかというと、そんなことはない。

 現代のRRが、アンダーステアを基本としている中、トゥインゴは徹底的にニュートラルステアだ。ノーズは軽く、思い通りに向きが変わり、リヤはきわめて自然にそれについてくる。アンダーステアもオーバーステアもまず出ない。操縦性は軽快かつ理想的!

 RR車の操縦性は、トゥインゴでその極みに達したと言っていいんじゃないだろうか? 身びいきかもしれませんが。

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