■準備を整えずに移行だけを叫ぶとオリパラのゴタゴタの二の舞に
そもそもが、欧州の一連の車両電動化の動きの背景には、エコロジー関連業界のロビー活動が見え隠れするとの話も聞く。いわゆる“ゲームチェンジャー”の存在である。日本やアメリカに対してエコロジー分野で欧州の存在感を強調させ、“ヨーロッパが世界のリーダー”といったものを画策しているのではないかとされている。
地球を守ろうという高尚な考えで活動しているひとの存在を否定するつもりはないが、世界的に環境保護活動で有名な10代の北欧の少女については、「アメリカは非難するが、中国はスルーしている」との指摘も多く見える。
気候変動は待ったなしで続いている。いまや南欧では平均気温の上昇もあるのか、家庭用エアコンが当たり前のように設置されている。現状、西ヨーロッパでは“ムラッ気”はあるものの、サマーシーズンには“猛暑日”のような日も目立っており、一般家庭でのエアコン装着もそう珍しくなくなる日が近いように感じる。
そのなかで、自然エネルギーによる発電設備への切り替え、電動車増による電力需要増加のための送電インフラの再構築なども行わなければならないだろう。そんなにいっぺんに現状変更することが可能なのか、少々疑問にも感じてしまう。
日本でも菅首相が“2050年カーボンニュートラル”宣言をしているが、現状はかなり微妙なものと考える。東京オリンピック&パラリンピック(東京2020)での、政府の“グダグダ”ぶりを見れば、“とりあえず言っただけ”というようなパフォーマンスだけじゃないかという不信感も募る。
「補助金出すから、東京都内でどんどん急速充電施設を作ってください」という施策があるようだが、現状の送電インフラで都内において急速充電施設をドンドン作ればどうなるのか? あるBEV関係者に話をすると、苦笑するばかりであった。
■口だけ出して手も金も出さない政府
2020年末から2021年の年明けにかけ、北陸地方で記録的な降雪とともに寒波が襲来した。その時暖房などのための電力需要が急増し、電力逼迫となったのは記憶に新しいところ。
本稿執筆時点では日本全国では例年どおりともいえるが、記録的な暑さとなっている。とくに北海道では21年ぶりの猛暑となっている。極端な電力逼迫は起きていないが、電力供給を心配する報道も目立っている。
筆者が販売現場をまわると、いまだに「北陸のほうでは、現状でも電力逼迫となったのに、BEVを増やし続けて大丈夫なのか」と聞かれることが多い。政府や官僚は「ガソリンから電気に代わるだけ」と考えているのかもしれないし、「面倒は民間人に丸投げすればいい」としているようにも見える。
紹介したような不安は、東京2020でも問題になったが、政府の具体的説明不足が挙げられる。掛け声ばかりで、電動車をふやすため政府としてインフラ整備や購入補助金など具体策が何も出てこないなか、“2030年にガソリン車販売禁止”とか、“2050年カーボンニュートラル”という掛け声だけがひとり歩きしている。
東京2020や新型コロナウイルス対策などへの政府の取り組みを通して、日本では“政治不信”が増大してしまったのは間違いないだろう。そのなかで、漠然とした電動車普及への不安を払しょくさせていくのは、より丁寧で具体的な説明を重ねていくしかないだろう。
2030年まで10年を切っている。東京2020のように、“試験勉強の一夜漬け”みたいな形で日本の本格的な車両電動化も見切り発車してしまうのだろうか?
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