■日本のHEV勢には追い風から逆風に
HEVについて、EUから離脱しているイギリスではすでに、2035年で新車販売できないことが発表されている。ディーゼルスキャンダル後は、HEVを得意とする日系ブランドのHEV、とくに日系ブランドのなかでもそれを得意とするトヨタ車のHEVが注目されよく売れていた。
それまでは、欧州市場では韓国ブランドにも押され気味とされるほど苦手だった日系ブランド車に“追い風”が吹いてきたともされたが、その追い風は短期間で消えることになりそうだ。
日系HEVを狙い撃ちしたものとも考えがちだが、「ゼロエミッションのみにする」とのことなので、直接的な狙い撃ちとは思えない。
しかし前述したように欧州は保有年数が長いので、現時点で「電動車にしようかな」と考えているひとから見れば、HEVやPHEVに対しては、ネガティブイメージが出てきて選択されにくくなることも目立ってきそうだ。
ただし、欧州委員会のリリースによると、PHEVについては2030年までは“低排出ガス車”としてカウントするとしているので、PHEV以上に“ババをひく”のはHEVとなりそうだ。
■ヨーロッパの環境保護活動に漂う強い違和感
“気候変動対策”という旗印のもと、車両電動化の動きは世界的にますます加速を見せているようにも見える。ただ、この動きは日本で感じるものと、欧州で感じるものとは空気の微妙な違いがある。
2019年にフランクフルトが会場となる最後のIAA(通称フランクフルトモーターショー/2021年開催からミュンヘンが会場となる)の取材のためフランクフルトを訪れると、ショー会場入口では環境保護団体と思われるひとたちが、抗議活動を行っていた。
この抗議活動は2017年(IAAは奇数年での隔年開催)時も行われていた。2019年に訪れた時、地元のテレビニュースを見ていたら、IAA開催直前に環境保護団体が自動車メーカーへ乗り込み、より地球環境破壊を導くとしてSUVの製造禁止を求めたというニュースが流れていた。
フランクフルト中央駅近くでは、若者がテントをはり、“自動車は地球の敵”みたいな活動を行っていた。日本でも環境保護活動は行なわれているが、それと比べるとなんともいえない強い違和感を覚えた。
現場で活動する若者などは心から地球環境の保護を考えているのかもしれないが、メーカーへ乗りこんだり、自動車は敵だとまで青少年に言わせてしまう、少々エキセントリックに見える活動は、何か別の力が働いているようにも見えた。
日本と異なるのは、環境保護活動を主たる活動とする政党があり、実際に議会へ議員を送り込み政治参画していることがある。つまり、見方を変えると欧州では環境保護問題は、政治思想対立の“テーマ”にもなっているのである。つまり、政治と直結しているといえるのである。
現にドイツでディーゼルスキャンダルが起きた時には、自動車産業に近いとされる、メルケル政権の弱体化も狙って非難が増大したともいわれている。
2019年開催のIAAは出展を取りやめるメーカーも目立ち、なんとも寂しいショーとなっていた。とくに地元ドイツ開催として、展示面積もハンパなく広く盛大にブースを構える、メルセデスベンツ、BMW、VWグループなども、例年に比べブース面積も狭く、どこかひっそりとしていた。
これには諸説あるが、そのひとつは環境保護団体などの動き(すなわち世論)に配慮したものではないかとの話もあった。
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