■新車にほぼ装着されているEDR 世界的な規格統一が進む
それでは、すでに日本メーカーの新車のほとんどに装着されているEDRについて、なぜこの時期に法律による装着義務化の方針を決定したのか、国土交通省自動車局に訊いてみた。
これまでの流れを辿ってみると、国土交通省は2008年から、技術指針として日本でのEDRの規格統一を含む技術的な検討作業を10年以上にわたって進めてきた。
いっぽう、国連欧州経済委員会(UN/ECE)に設けられた、世界的な車両規格統一を実施する自動車基準調和世界フォーラム(WP29)において、2021年3月に事故時のデータ記録装置の標準化に関する協定が締結された。
これを受けるかたちで、2021年6月末に開かれた国土交通省自動車局の交通政策審議会陸上交通分科会自動車部会において「今後5年間の対策の方向性(ポイント)」がとりまとめられ、EDR装着の義務化の方針が定まることになった。
国土交通省は今回のEDR装着義務化の決定によってEDRの日本での標準化を進展させることで、事故時の車両の走行データを、保険や司法による事故分析などに関して広く活用しやすくなることを想定している。
同局担当者によれば「衝突被害軽減ブレーキなどADAS(先進運転支援システム)の進化が進むにつれて、EDRによる作動条件を確認するための規格統一を促すことになります」とコメントしている。
■広く運転データを記録するEDR
EDRの機能について説明を加えると、後付けとして車両に装着される映像を記録するドライブレコーダーとは異なり、車両内部、具体的にはステアリングホイールのSRSエアバッグ内にあらかじめ装着され、内蔵されたエアバックの制御ユニットととともに、事故時に作動すべく装備されている。
データとして記録されるのは、車速(衝突速度の変化)、エンジン(モーター)回転数、アクセル/ブレーキ・ペダルの踏み具合、ABSやESPの作動状況、自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の発動―などの状況を記録。
ブレーキオイル圧力、加速度、ヨーレイト、シートベルト着用の有無、ステアリングの操作角度など、データの収集は広範囲に亘る。
今回のEDRに関する改正省令では、100分の1秒ごとに速度の変化が確認できることや、SRSエアバッグが作動した事故などについて、少なくとも2回分が走行データとして保存可能であることを仕様要件とする。
ちなみにトヨタでは2012年以降のほぼすべての新型車にEDRが装着され、最新仕様では10回分の事故データを記録可能としている。
ここで国土交通省がEDRの利用について、2021年6月に開かれた検討会の資料のなかで示さえた方向性について一部抜粋しておく。
ドライブレコーダーなどの走行記録装置について「交通事故前後等の情報を保存する車載記録装置が広く普及している」としたうえで、「これら装置に記録された事故データは、車両安全対策における交通事故分析への活用に加え、保険料算出や交通事故に関する民事裁判などの責任関係の明確化や交通事故等の捜査への活用など、多岐にわたって利用価値があるものである」とされ、装着義務化のメリットの大きさを示している。
さらに「エビデンスに基づく車両安全対策の推進」として、ドライブレコーダーについて「あおり運転等の抑止効果や事故分析を通じた車両安全対策への活用などのメリットを踏まえ、普及拡大を図る必要がある」としている。
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